田尻共同水車

縦軸タービン形式の水車。タービン好きには必見の遺構。

(群馬県前橋市田口町)

稚蚕共同飼育所巡りをするために、友人が事前に赤城南麓方面の古い住居地図を調べてくれていた。前夜、その地図を見ながら作戦会議をしたのだが、その際、地図上に「水車小屋」という表記を偶然発見した。もしかしたらまだ残っているのではないかと期待して、地図の場所へ行ってみた。

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残念ながら水車小屋はすでに倒壊して、残骸が残っているだけだったが、それでも地元有志が建てた立て札が立っていた。それによるとこの水車は「田尻共同水車」という名前だったようだ。それ以外の説明は一切なかった。

立て札があるくらいだから地元では有名な物件かと思ってググってみたが、まったく情報は得られなかった。おそらくこのページがネット上での初出だと思われる。

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廃材がまだ転がっていた。来るのが20年くらい遅かったのかも知れない。

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ベルト車(プーリー)が転がっていた。

利用目的は、精米・製粉か、あるいは、撚糸・製織だったのではないか。

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水車への導水路。

この水車は、これまで当サイトで紹介した水車とはまったく形式が異なるもので、オープンタービンといわれるものだ。

一定の回転数、一定のトルクが得られるので、発電、撚糸、製材などに使用できる産業用の水車なのだ。

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水は写真の右下方向から流れてきて、左上のほうにある大きな川に排水される。

左側に水門があるのが見えるが、この水門を閉じると水位が上がって奥に見えるコンクリートの水槽に流れ込む。

オリのように見えるのは、水槽にゴミが流れ込まないようにするフィルタだ。

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水槽の中央部にはタービンが見える。

実はこの水槽は二階建てになっていて、ここから見えるのは二階の部分。一階の水槽へ水が落ちるときの落差を利用して、縦軸のタービンが回転する仕組みになっている。

イメージとしては砂時計のようなものを想像していただきたい。砂時計の砂が落ちる穴のところにタービンがあると考えればよい。

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水槽を小屋のほうから見たところ。茶色いベルト車の下にタービンがある。右側にはハンドルが見えるが、出力を調整できたのではないか。

ハンドルなどの形状からして、市村鉄工所というところの製品「竪軸露出型水力タービン」のようだ。

産業考古学的にみて、かなり価値のある物件と思われる。

(2007年01月14日訪問)