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ホーム赤城山南麓の稚蚕飼育所正治首藤稚蚕共同飼育所

正治首藤稚蚕共同飼育所

セントラルヒーティング方式の謎が解明した。

(群馬県前橋市堀越町)

地図・MAP
 
   
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次の稚蚕飼育所が見えてきたとき、思わず、あっと声を上げてしまった。大部屋タイプの飼育所だったからである。赤城南面で稚蚕飼育所めぐりを始めたごく初期に、引田小坂子一区で見た建物と同じパターンの建物だ。

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飼育所巡りを始めたころからくらべると、私たちもずいぶんとスレてきて、臆することなく見学を申し込むようになってきていた。

セントラルヒーティング方式の飼育所の実態をつかむため、ここはなんとしても見学したいところだ。

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どうも農家の倉庫に使われているようで、壁の一部がぶち抜かれている。これだけでも、充分内部の様子がわかるのがうれしい。

だが、もっと詳しく見たいので、母屋のほうに出向いて、中を見せてもらう許可をもらった。

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定礎は「正治(まさはる)首藤稚蚕共同飼育所 セントラルヒーヒングポット方式 昭和43年4月吉日 前撚興業有限会社装置」とある。以前に小坂子一丁田で見た定礎では「セントラルヒーティングフレーム方式」とはちょっと言葉が違う。

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まず、L字型の折れ曲がっている側の内部を、飼育室のほうから見てみる。

奥にある手すりは地下の貯桑場への階段だ。

この部屋は桑の葉を細断するための作業「挫桑(ざそう)」をするための部屋である。

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L字型の屈曲部を飼育室のほうから見る。

床が取り去られているが、ここはたぶん宿直室だったのだろう。奥に押入れを取り除いた跡も確認できる。挫桑場と飼育室の途中に宿直室がある構造で、消毒などがやりにくい建築計画に思える。

写真右側の暗い部屋はボイラー室。

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このボイラーで、飼育室全体を暖房したのだ。

暖房した室内で稚蚕を飼う方式を「大部屋方式」という。「大部屋」といっても、部屋の面積が広いという意味ではない。対義語の「小部屋方式」が1間程度の押入れのような密閉された装置内を加温して飼育するもので、それに対して、人間が給餌作業する部屋全体が加温されているものを「大部屋方式」という。

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これが飼育室。L字型の長いほうの直線部分にあたる。

ここに棚を立てて、蚕箔で蚕を飼育した。

壁の上のほうには換気扇がならんでいるのが見える。

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部屋の外周に溝がある。この溝に水蒸気かお湯のパイプが通っていて、ボイラーの熱を伝えるようになっていたという。

つまり、室内で暖房機を使うのではなく、別室にあるボイラーから熱を循環させるのだ。セントラルヒーティングポットの「ポット」とはこの溝のことなのだろうか。

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ボイラー室側にあった謎の装置。

部屋の上にたまる暖気を循環させるための送風機ではないかと思う。

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これもおそらく送風機だろう。

下の扉は配蚕口。

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挫桑室の奥にある階段。

左の扉は外に繋がっているので、桑を運び込みやすかっただろう。

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貯桑室。内部は真っ暗でひんやりとしている。

比較的新しい飼育所では、桑の出し入れに簡易エレベータを設置しているところがあるが、ここは、階段の上り下りで出し入れしていたようだ。

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天龍式挫桑機が壊れてころがっていた。

水色のパイプが飼育棚だ。いわゆる蚕棚(かいこだな)である。10段の蚕箔を差し込むことができる。飼育室内は温度管理されているとはいえ、やはり暖かい空気は上にあつまるため、上の棚の下の棚では成長に差が出てしまう。棚の下の段から蚕箔を取り出して給餌したあと、上の段に戻すというようなローテーションをして、飼育経過を揃えるようにしたという。そのため、蚕棚は11枚の蚕箔を指せるようになっている。

引田の飼育所を見たとき、いずれ内部を見てみたいと書いたが、ようやくそれが現実のものとなった。

農家の納屋に使われてるとはいえ、当時の様子もよくわかり、とてもよいものを見せてもらった。

(2008年12月31日訪問)

   

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