白川稚蚕共同飼育所

建物のあいだを農道が抜けている。

(群馬県高崎市箕郷町白川)

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2010年1月10日。私は正月休みを遅くとって、群馬県の小正月にまつわる行事などを見てまわるため帰省していた。このころには群馬県の稚蚕飼育所巡りもすでに一段落し、主に養蚕農家を訪ねていた時期だ。帰省した初日、友人の一家と富岡製糸場碓氷社事務所などを見学した。その行程の最後に、見落としている飼育所があるというので立ち寄ることになった。

場所は、榛名山のすそ野で見晴らしのよい丘の上だった。

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到着してみるとそれはまるで道路で分断されたように見える、2棟の飼育所だった。

道路は昔からものなので、あとから分断されたのではないとは思うのだが。

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西側(左)の建物は南側(手前)に更衣室らしき下屋がある。

東側の建物には北側に更衣室らしき建物がある。ということは、2棟の建物は別々に運用されて、作業者が行ったり来たりすることはなかったのであろう。作業室には長靴などを消毒して入室していたのだから、いったん外を歩くということはなかったと思う。

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2棟の向かい合った面に配蚕口がある。

つまり飼育室は道路側ということであり、道を挟んで左右鏡像のような造りになっていることがわかる。

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中をのぞいてみると、室(むろ)は完全に取り除かれて倉庫になっていた。

小屋は軽量鉄骨のトラス。

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東側の建物は傾斜地に作られているので、建物の一部が石垣積みの基礎の上に建っている。

青い扉はおそらく半地下の貯桑室への入口。

左の石段を上がったところの部屋は更衣室への入口ではないかと思う。

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さらに坂を降りて行くと、車庫のような空間がある。

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中にはなんだか家庭用の玄関のような扉があった。

宿直室の出入口だと思うが、飼育所を買い取った人が、住宅として使用した期間があったのかもしれない。

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飼育所の北側には白川神社という神社がある。その門前には背の高い常夜灯があった。

この場所は丘の上で遠くまで見通せるので、ここに灯をともしたら遠くからも見えたことだろう。

(2010年01月10日訪問)