多胡稚蚕共同飼育所

建て増しで動線が混乱してしまっていたのではないか。

(群馬県高崎市吉井町吉井川)

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龍源寺から北上。上信越高速道を越えたところに、多胡稚蚕共同飼育所があった。

遠目から、ちょっと特徴的な越屋根を持っていることに目が行く。高窓にガラスがはめられていて、採光が考えられている。きのう見た、松田稚蚕共同飼育所とも似た高窓の作りだ。

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建物は軽量鉄骨造、小屋も軽量鉄骨。

飼育所は斜面を造成して作られている。山側が配蚕口、谷側が宿直室となっているのだが、配蚕口の側は造成の法面になっているため、本来の“配蚕"という用途には使えなかったのではないだろうか。

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配蚕口の様子。とてもここから大量のカイコや廃棄物などを運び出せたとは思えない。

左手前は便所になっている。

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便所は配蚕口と法面のわずかな空間にあり、いったん建物から出ないと利用できなかったようだ。

建物の中では普通は消毒された長靴をはいて作業をしているので、外にでるときは靴を履き替えていたと思う。これは面倒だったろう。

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外壁には、炭火育時代に使用された吸気口が並んでいる。すべてセメントで埋められていた。

ここ数ヶ所で見てきた判断の難しい形式だ。

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建物の谷側には宿直室がある。

ただし、これが飼育所時代のものなのか、その後に別用途の建物として使われたときのものなのかは、よくわからなかった。

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宿直室の地下は貯桑室と思われる。貯桑室扉の左側に石段が見えるが、これは行き止まりになっていて利用できない。外に階段があるということは、貯桑した桑をこの階段で運び上げたのではないかと想像される。そこがふさがれているというのが、この部分が飼育所時代以後の建て増しではないかと思う理由だ。

使えない階段があるというのは、富岡市の君川中郷稚蚕共同飼育所でも見かけた構造だ。

(2008年12月29日訪問)