お杉さま

長尾謙忠という武将の首塚といわれている。

(群馬県前橋市紅雲町2丁目)

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前橋市の中心街の地名は、戦前と大きく変更されて味気ない名前に変わってしまったが、ここ紅雲町(こううんちょう)は江戸時代から続く地名である。この町を歩くと前橋城の家臣の武家屋敷がけっこう残っていたような印象があったが、いまは、龍海院という寺の北東の一角に何軒がそれとわかる屋敷が確認できるだけになってしまった。

その龍海院の参道にある「お杉さま」を紹介しよう。

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「お杉さま」は長尾謙忠という武将の首を埋めた塚だといわれている。謙忠は上杉謙信の従弟であった。謙信が北条氏を破って北関東を平定したとき謙忠には前橋城が与えられたが、のちに謙信に謀反を起こし討たれることとなった。謙信の怒りは強く、謙忠は首を切られたが、胴と首を一緒に埋葬することも許さなかったという。胴は現在の龍海院の敷地に、首は参道この場所に埋められたという。

かつては細い路地にあって目立たなかったが、いま前橋市内は空き地が増えており、目印の杉の木も見つけやすくなった。

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お杉さまは首から上の病に霊験があるという。

私が子供の頃は、青竹で作った酒づつがよく奉納されていた。その当時の祠は右側のものだったが、屋根が壊れて左側の新しい祠が造られた。

古い祠が壊れたのは、いたずらのせいだったのかもしれない。古いほこらが壊れたとき、「神様のお宮壊してなんとする、罰こそ当たれ、御利益ぞなし」という狂歌が書かれていたのを覚えている。

(2010年01月09日訪問)