松井三郎商店

おそらく前橋最後の副蚕糸の仲買い商だった。

(群馬県前橋市三俣町2丁目)

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蛭川繭糸店から少し北に行ったところにある、松井三郎商店。

昭和21年創業で、副蚕糸を扱う仲買い商だったという。副蚕糸とは、生糸を作る過程で生まれる副産物のキビソやビスのような糸のことである。前橋には全盛期に485戸の国用製糸があって、そこから沢山の副蚕糸が出た。そうした原料を買って、絹紡糸の会社に卸した。おもな取引先は信濃絹糸という紡績会社だった。

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そんな製糸全盛の時代の蚕糸業界には悪い商人も少なからずいて、品質をごまかすような商売も目立ったという。絹産業がいまのように斜陽産業ではなく、生き馬の目を抜くような活気に満ちた時代であれば、当然、狡い人も多く集まってきたのだろう。

そんな中で、松井三郎商店は正直をモットーとして商売を続けてきたという。そのおかげで、よい取引先に恵まれ、前橋で最後まで仲買いの商売を続けることができたのだそうだ。

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奥に見える倉庫などの一部は、おそらく糸商の時代のものだろう。

(2012年09月08日訪問)