パアンの飲料水店

飲料水の工場を見学した。

(ミャンマーカレン州パアン)

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ミャンマーの飲料水事情を詳しく紹介しようと思う。

よく、「外国では水道水は飲めない」というが、ミャンマーの多くの地域では、まず水道というものがない。

裕福な家になれば、井戸を持ち、その井戸からポンプで汲み上げた水を屋根の上のタンクに溜め、そこから塩ビのパイプの配管で、台所やシャワーなどに導水するか、さらに余裕があればポンプで加圧して使う。

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飲み水は、20ℓ入りのポリタンクで、飲料水屋が運んでくる。日本のLPガスみたいな感じだ。

飲料水屋はトラックや三輪バイクなどで水を運んできて、空きボトルは玄関先に出しておけば回収していく。料金は月締めになっていて1ボトルで40円くらい。

だが、おそらくこの飲み水も買えず、井戸水を飲んでいる人々もいるのだろう。

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これが飲料水ボトル。パアン市には何軒かの飲料水店があるが、これは日本から持っていった水検査薬で調べてみて、水質が良かったウゥサゥパン水店もの。

配達された直後、上のキャップと蛇口には、熱収縮フィルムのシールがされているのでそれを剥いてから使う。

リユースのボトルなので、ペットボトルのミネラルウォーターに比べてやや衛生面で不安を感じさせるが、一応、外国人でもこうしたボトルの水は飲んで大丈夫だと思う。

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ボトルには持つところもないし、流し台に載せるのにも「エイヤッ」ってくらい気合いが必要なのだが、ミャンマーの主婦はだれでもこれを持ち運んで生活しているのである。

さて、私はこの滞在ときパアン市内に借家を借りて自炊生活をしていた。家を借りたとき、未開封のボトルが何本も置いてあり、大家さんが「これはプレゼントだから使っていいよ」と置いていった。

その後、その水を使っていて、歯磨きをしようとおもってカップに水を汲んだところ、カップの中にボウフラが泳いでいるではないか。不審に思い、上のキャップのシールをはがし中を覗いてみると、数匹のボウフラが生きたまま入っていたのである。

翌日、さすがに飲料水店に文句を言いに行って、ボトルを新品に交換してもらう。飲料水店の社長いわく、どうやら大家が日にちがたったボトルを置いていったようなのだ。この水は、配達されたらせいぜい1週間か、長くて10日くらいで使い切らないといけないらしい。

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「ウチの水が心配だったら工場を見てくれ」と言われ、ボトリング工場を見学することになった。

工場は借家からさほど遠くないところにあった。借家の井戸は洗濯物が茶色く染まるような水だったが、ここは深井戸なので直接飲むことができるらしい。

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配達予定のボトルが並んでいた。

床はきれいに洗い流してあり、私たちがサンダルで歩いた跡も、すぐ職員が水を流してきれいにしていた。

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事務所。

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室内はアルミサッシュが使われており、窓にもガラスもはまっている。

パアンではよほど立派な家でも、窓ガラスがはまっていることはない。網戸も存在しないので窓をあければ開け放ちなのである。網戸などヤンゴンまで行かなければ売っていない。

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井戸水を濾過する機械だろうか。

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キャップと蛇口は毎回取り外して消毒するようだ。

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ボトル詰めしている担当部署。20歳前後の女の子が中心に働いている。配達は男の子、ボトリングは女の子と仕事が分かれているのだろう。

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彼女たちがゴム手袋やマスクをして作業しているのには驚いた。

「パアンにこんな衛生度の高い場所が存在したんだ。」

日本の感覚では当然に思えるこの風景だが、ミャンマーの一般的な食堂の厨房や、その他もろもろの場所での衛生レベルから考えれば、これ以上は望めない環境であることは確かだ。

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キャップのネジ山につまった汚れも、女の子が丁寧に取り除いている。

・・・とはいえ、この溝に目に見えるような汚れが入るという時点で、ボウフラが湧いてもしかたないかな、という気がする。ボトルが回収されるまで、各家で野外に放置されて雨ざらしになったりするのだろう。

キャップの内側に低発泡シートのパッキンでも入れて、パッキンは毎回使い捨てにしてほしいところだが、それも望みすぎなのだろう。

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熱収縮フィルムは人手でひとつひとつ、ドライヤーで熱して処理していた。

ミャンマー基準からすれば、この水ボトリング工場は想像以上にはがんばっていたと言えると思う。

パアンで暮していれば、いろいろと日本では考えられないような衛生状態にさらされることになる。だが郷に入っては郷に従えで、たいていのことは平気になってくるものだ。

ポリタンクの水に関しても、ボウフラが湧かなかったとしても、細菌などは増殖するのは当り前なのだから、早く飲み切ってしまうしかないのだと勉強になった。

(2014年07月17日訪問)