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ホームミャンマーカレン州の気球祭りシュエシンタイ機業場

シュエシンタイ機業場

絹のつづれ織りを得意とする大きな工房。

(ミャンマーマンダレー管区アマラプラ)

地図・MAP
 
   

仕事が終わりマンダレーからヤンゴンへと戻る。マンダレー空港はマンダレー市の中心からは50kmほども離れていてけっこう遠い。

「空港へ行くまでの時間にちょっとだけ余裕あるけど、アマラプラ行ってみる?」と、通訳さん。

アマラプラはおおざっぱに言えば、マンダレー市街とマンダレー空港の途中にあり、ミャンマーを代表する織物の産地。そしてこの町の観光の目玉といえば、湖を横断する1.2kmの木造橋「ウーベイン橋」だ。

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アマラプラは歴史上2度、都が置かれたことがある町で、町の入口には城壁の跡がわずかに残っている。

だが市街地はその後の再開発が進み、古都のイメージはない。

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アマラプラの中心街、鉄道駅から南へ500mほどのところにある「シュエシンタイ(Shwe Sin Thai)」という機屋(はたや)さんへ連れて行ってもらった。

ここは絹の織物を作っている機場で、おそらく工芸に興味のある外国人観光客を連れて行く定番の工場なのだろう。

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工場の中も見学できる。

織り子さんたちも、観光客が来るのに慣れているのか、私たちが入っていっても手を止めずにもくもくと織っていた。

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布はロンジーというミャンマーのスカートを作るためのものだと思われる。

カレン州では短い幅の布を3枚縫い合わせてロンジーを作っていたが、ここでは1枚の広幅の布として織り上げているようだ。

幅が広いため、1台の(はた)に2人の織り子が並び、左右の模様を分担している。

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つづれ織りという織り方だと思う。

タテ糸を制御するパーツ「綜絖(そうこう)」は2枚しかないので、単純に偶数奇数のタテ糸が上下するだけである。これで左右の全幅にヨコ糸を通したら単純な平織りにしかならない。

つづれ織りという手法は、模様を出すためにタテ糸の一部だけでヨコ糸を細かく往復させるという方法である。

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これが模様をつけているところ。

ヨコ糸のボビンを格納した舟型の道具を「()」という。杼を特定のタテ糸の間に手作業で通してゆくのだ。

このような波や蔓のような模様は、ビルマ族が好むデザインであり、カレン州で見た直線的な模様よりずっと手間がかかる。

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織り子から見える布の上側は、織り上がりでは裏側になる。上側を見ると糸があちこち飛んでいて、柄としては使えない。

そこでときおり鏡で下側を写して、うまく織れているかどうか確認していた。

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私はこうした複雑な模様のロンジーは、パンチカードなどで制御された自動織機で織っているのかと思っていたが、実は手織りだったのだ。

パターンは表に印刷されて、織り子さんの目の前に吊ってあった。

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一列の模様付けが終わると、1回綜絖が上下してタテ糸入れ替わる。とても根気のいる作業だし、2人で織っているのでどちらかが手間取ったらもう一人の手も止まってしまうので、呼吸を合わせて仕事をしなけばならない。

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工房内をひと回りしてみた。

これはボビンにタテ糸を巻く道具かな。

ここは整経(せいけい)の作業をするスペースのようだ。

「整経」とは、機にかけるタテ糸を同じ長さにそろえて計る作業である。

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ボビンはクリールという枠に配置される。

このクリールだと一度に24×6=144本のタテ糸を計ることができる。

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それをこのドラム整経機に決まった回数巻き取ってゆくことでタテ糸の長さを測る。

クリールから一度に引き出せる糸の最大数144本は幅にしたらわずかである。クリールから巻き取る作業を繰り返して、この巨大なドラムに幅広に巻いていく。ロンジーほどの幅ならばタテ糸は数千本は必要だろう。

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これは杼にセットするヨコ糸を巻く道具であろう。

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工房の奥のほうでは、さきほど見た2人掛けの機とは違う種類の機を使っていた。

こちらは1人で織っている。

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綜絖はすべて糸綜絖だが、ペダルで規則的に上下するのは奥側の4枚。手前にびっしりある糸綜絖は手でつまみ上げて模様をつくるためのものだ。

基本的な作業手順は、以前にエインドゥ町で見た織機と同じである。エインドゥ町の機は緒巻(おまき)が大口径で膨大なタテ糸を一度に機にかけていたが、この機にかかっているタテ糸の量は手機(てばた)としては普通であろう。

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先ほど見たつづれ織りの作業では、ヨコ1列の中に複数の色の糸が入るわけだが、この織機はヨコ糸は全幅で往復しているので、1色のヨコ糸がタテ糸の上か下を通る違いで模様を作ることになる。

つまり、先ほどのつづれ織りとは違って、布の表と裏はポジネガのように逆の色使いになるだけである。

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この織機もエインドゥで見たのと同じように、杼を反動で飛ばすいわゆる「飛び杼」の機である。エインドゥでは片手で(おさ)を打ち込みながら、もう一方の手でヒモを上下に引いて飛び杼をコントロールしていた。そのタイプの飛び杼は日本でもよくあるものだ。

だがこの機は筬柄(おさづか)前後運動を自動的に飛び杼の左右運動に置き換えるカムがついており、両手で筬を持って作業できるようになっている。幅広で重たい筬柄を動かすのにやりやすそうだ。

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工場から道の反対側はショップになっている。

工場見学のあと、観光客はこちらのショップで買い物をするという流れなのだろう。

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扱っているのはほとんどがロンジー。もしくは、ドレスなどに仕立てられる生地であろう。

一部、ストールなどの巻モノもある。

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シルクのロンジーは高価だし、洗濯が難しいので、結婚式やパーティーなど特別の場合の装いではないかと思う。

値段は聞かなかったが、タテ糸ヨコ糸両方がシルクの手織りのロンジーはおそらく1万円では買えないであろう。

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このような鮮やかなロンジーはすべて女もの。

ミャンマーでは男性もロンジーを履くのだが、男もののロンジーはレンガ色、紺色、深緑などの配色のチェック柄や縞柄しかなく、悲しくなるくらいに地味である。

私も何本か持っているし、現地でたまに履くこともあるのだが、男性にはロンジー選びの楽しみはない。それに履き方が男女で違うのだが、男の場合ヘソの下でお団子みたいに布を丸めるが正式で、それはどうもスマートじゃない。履き方まで男のロンジーは残念な感じなのだ。

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「こんなのお土産にどうですかー?」

店員さんが巻モノを勧めてくれたけど、買う気を見せなかったら、あまりしつこくされることもなかった。

ここ高級店なのだろうな。

(2015年05月06日訪問)

   

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