ザタピン町

カレン・モン州境の町。

(ミャンマーカレン州パアン)

ザタピン(ဇာသပြင်)町へでも行ってみようかな・・・。

今回の仕事は派遣期間が短いので、休日はすべて外に出かけるつもりなのだ。だが昨日の土曜日にズェガビン山に登って次の日の日曜なので、さすがに無理はしたくない。あまり遠くない場所で、まだよく知らない町、ザタピンを目指すことにした。パアン市内からは片道40kmくらいだろうか。

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ザタピンはパアン・モーラミャイン街道の小さな河港町。カレン州とモン州の州境のカレン州側にある。

州境にはジャイン川という大河があり、ジャイン・ザタピン橋という橋が架かっている。ジャイン川の下流部の渡河地点はこの橋しかないので、いくつかの街道がこの橋の前後で収束しており、街道の交差点にはたくさんの茶店が宿場町を形成している。

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パアンからモーラミャイン方面へ、あるいは、その先のムドンやタンビュザヤを目指す場合、軽食をとったりするのにちょうどよい中継点でもある。

私は主にオートバイで行動しているわけだが、パアンからモーラミャインの途中には信号機など1箇所もないので、どうしても走りっぱなしになってしまう。なので往路、復路ともこの宿場町でジュースを飲んで一息つくことにしている。

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ザタピン町のすぐ先にある、ジャイン・ザタピン橋の北詰め。

橋の手前に検問があり、警察軍やらが詰めている。四輪車はすべて止められ料金を徴収される。オートバイは無料。

ちなみにミャンマーでは橋は軍事施設扱いで、写真撮影は禁止。ちょっと遠目から撮ってみた。

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ザタピンの町はパアン市からみて橋の手前にあるので、実際に橋を渡るのは次の町へ向かうときになるが、先に橋を紹介しておこう。

ジャイン・ザタピン橋は総延長884mの巨大な釣り橋だ。橋の中央部の高さは水面から30mくらいはあるのではないか。ミャンマーの橋としては立派な部類である。架橋されたのは1999年だが、もう老朽化で掛け替えが検討されている。

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橋床は鉄板を敷き詰めたスノコ状になっている。橋の構造が舗装の重量に耐え切れないのだ。

スノコのすきまは3cmくらいでオートバイのタイヤが挟まることはないが、ハンドルを取られそうで怖い。すきまを避けて細い鉄板の上を一本橋を渡る要領で走るため緊張する。スノコの下は水面まで見えているので、走りながら下を見ると橋床が透けて見えるのだ。

もう何度も通っているけれど、毎度毎度、渡り終わるころには手のひらに汗をかいている。

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ザタピンの町の中へ行ってみた。

ザタピンは元々はジャイン川の河港町なのだろう。

ジャイン川の支流、ザタピン川を天然の港として発達したため、町の中心は川である。

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ここはその川の西側のマーケット。

道はコンクリで舗装されていて、けっこう人通りがある。

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私はこういうミャンマーの田舎町が好きだ。

ヤンゴンのダウンタウンのアパートメントで暮らせと言われたら1ヶ月でストレスがたまって逃げ出したくなるだろう。だがこんな田舎町に住めと言われたら、静かに、怠惰に、まるで長い夢を見るように一生を暮らせるのではないか、そんな気がする。

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町の中央には唯一の橋があり、マーケットはこの橋を中心に東西に続いている。

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橋の上は、ジャイン・ザタピン橋と同様に鉄骨のスノコだが、枕木状に並んでいるので走りやすいし、歩行者用の鉄板も渡してある。

これならまったく怖くない。

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橋の上から見た風景。河岸(かし)が続いている。

ジャイン・ザタピン橋ができるまでは、パアンやエインドゥ方面からの物流はこのザタピン町(あるいは、同じようにジャイン川に面した他の河港町)から船荷に積み替えてモーラミャインまで送ったのではないかと思う。

ジャイン・ザタピン橋の場所には渡し舟はない。というのも、対岸には対になる河港が存在しないのだ。

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町の中の住宅のあいだの道を目的もなく、ひと通り走り回ってみた。町の大きさは1km四方程度だ。

緑が多く、道路はほとんど舗装されていて暮らしやすそう。

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私が「里門(さともん)」と呼んでいる建物があった。

これまで私は、ミャンマーの里門は集落の入口に境界として作られるものだと認識してきた。だがこの里門はどうも様子が違う。

住宅街の途中に作られているのだ。

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まるで地域の憩いの場として作られているようにもみえる。

しかもこのザタピン町にはこうした里門がいくつもあったのだ。ここなど、ひとつの里門から隣の里門が見えている。

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この里門の下にはいくつもの鳥小屋が下がっていた。

スズメに餌付けするためのものだと思われる。

この町は、町内型の里門を初めて知った町であった。

実はきょうこれから見て回る町にはすべてこのように集落内に門があり、逆に集落の境界には門がないという特徴を持っていたのである。これはもはや門というよりも「車両が通過できる茶堂(ちゃどう)」と認識したほうがいいかも知れない。

これはパアン市の近郊ではまったく見られない特徴だ。これまで知った限りではジャイン川の流域にこのような町が多くあるように思う。

(2015年04月26日訪問)