王子公園の岩の山

コンパクトだが楽しそうな岩山。

(和歌山県紀の川市王子)

2004年の遅い夏休み。かねてから計画していた富士山に登り、その足で群馬に帰省。群馬では新田地方の湧水巡りなどをして過ごした。これはその群馬からの帰り道で立ち寄った公園になる。

私は高速道路が嫌いで、群馬⇔徳島間も一般道のみで移動することも度々だった。関東地方からクルマで徳島に入るルートは神戸から淡路島を経由し鳴門大橋を渡るか、和歌山市から徳島市行きの南海フェリーに乗るかに限られる。

前者(明石ルート)だと、神戸→淡路島をタコフェリー(廃止)で渡ったとしても、淡路島→鳴門は高速道の鳴門大橋を利用するしかないので、全行程一般道というわけにはいかない。そして垂水I.C.のアクセスの悪さから、結局神戸の手前あたりで高速道に入ることが多い。そうすると神戸→淡路島→徳島まで100km近い行程が高速道となり、旅の最後の疲れているときにガラガラの高速道で眠気との戦いとなる。

後者(南海フェリー)の場合は、とにかく和歌山市まで行ってから乗る便を決め、市内でご飯を食べたり温泉に入ったりして時間を調整し、フェリーに乗ったらすぐ熟睡。そのためのマイ枕、マイ毛布がクルマに常備されている。料金はちょっと割高になるが、最後の区間を寝て過ごせるのでこのルートは体力的には楽だ。

どちらのルートを選ぶにしても途中までの行程はだいたい同じで、名阪国道の休憩ポイント「針テラス」までに決断することにしていた。そしてこの日は南海フェリーを選択したのだ。その場合でも、名阪国道の無料区間の終点である天理からどうやって和歌山を目指すかという選択肢はいくつかある。天理→羽曳野→岸和田と以前にタコの山巡りをした地域を通過するか、天理から南下して紀の川沿いに和歌山市を目指すかである。

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この公園は、天理→和歌山のあいだのどこかにあるわけだが、GPSもない時代、記憶もいっさい残っておらず、場所の特定に苦労した。

ヒントになったのは滑り台の後ろに踏切が写っていることだけ。結局、天理→和歌山のあいだの、自分が通りそうな踏切を衛星写真でひとつひとつ確認することになった。ページ右上の地図をクリックしていただくと、「群馬から徳島へ移動中なぜこんな枝道に入った!?」というような場所である。

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場所が特定できなければ紹介するのもやめようと決めていたが、お蔵入りさせるには惜し過ぎる滑り台だったので、頑張って特定した。

この公園の中核遊具はこの岩山型滑り台。

階段、滑降部、トンネル、崖登りがコンパクトにまとまっている。岩山の質感もいい感じだ。

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山頂から階段と滑降部を見たところ。

メーカーは不明だが、滑り台をよく理解している会社だろう。私はこうした岩山系の滑り台が特に好きで、徳島市内の大西公園や羽ノ浦町の那東農村公園の滑り台は、私にとって徳島ベストテンに入る台である。

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材質は人研(じんと)ぎ。

つまりセメントと砕石を混ぜたもの塗り、硬化してから研ぎ出すという仕上げである。

滑り台には色々な材質がありそれぞれにメリットはあるのだが、滑り台マニアにとって人研ぎ台が至高なのは、必ず左官職人の手にかかった一点モノだからだ。そして岩山型の物件は、それぞれに同型のモノが見つからることがない特に貴重な存在なのだ。

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岩山の一番高い地点は、意外にも滑降部の滑り出しではない。ただ登るだけの目的で山頂が作られているのだ。

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山頂へはわずかなホールドがある崖をフリークライムで登るようにデザインされている。

粋な設計だ。

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フリークライムルート以外の崖は軽くオーバーハングになっているため登ることは難しいのだが、ロープをかけたりしてこの壁面で遊ぼうという子どももきっといるのではないか。

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というのも、壁面のところどころに意味あり気なフックがあるのだ。

これをどう使うかは子ども次第という野心的な設計なのであろう。

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どの角度から見ても美しい。

雨上がりで滑ることはできなかったのが惜しまれる。

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滑降部の下部には水平部分が後補されていた。

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この公園にはもうひとつ複合遊具の滑り台があった。

こちらのほうが年代は古そう。

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橋状のクライム主体の遊具に滑り台が取り付けられているというパターン。

徳島の医家神社御所小裏で似たような物件を見ているが、いまだ完全に同じものは発見していない。バリエーションの多そうな遊具だ。

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この物件には一般的なハシゴや階段が一切なく、リングラダーやネットクライムでしか登ることができない。滑り台を連続して滑りたいときには、ちょっと面倒な構造だ。

この公園にはほかにフランコ、シーソー、鉄棒があった。

2018年3月現在、ここで紹介した鉄製の遊具類は現在すべて撤去されてしまっているが、岩山の滑り台は健在である。

(2004年09月02日訪問)