愛知県一宮市は繊維の町だ。江戸時代から木綿を生産し、現代では毛織物、化繊類の生産、縫製工業が盛んである。特に毛糸の生産では日本一の生産高を誇る。

その一宮市で操業停止になった織物工場を見かけた。「長谷川毛織」である。
正面は大谷石の壁に黒塗りの土蔵のような倉庫があり、その後方にはやはり黒塗りのノコギリ屋根が続いている。

工場は操業を停止してすでに1年以上がたっているという。跡地は再開発されるのか、あるいはより新しい設備を持った工場に生まれ変わるのかは知らないが、この古めかしいノコギリ屋根の工場が取り壊されるのも時間の問題だろう。

南東の角から工場を臨む。
外周の小壁にダイヤマークの装飾がある。

奥に見える煙突までが工場の敷地である。
ノコギリ屋根は北側に採光を持ち、織物工業の小規模な工場によく見られた建築様式である。最近では輸入物の安い衣料品に押され、こうしたノコギリ屋根は徐々に姿を消しつつある。

一宮市の周辺では、まだ農家の兼業で機織りなどをしている小さな工場で多くのノコギリ屋根を見ることができるが、これほど立派なものはそうはないであろう。是非とも記憶に残したい景色だ。

染めた繊維や仕掛かりの製品の干し場だろうか。

工場の敷地内にある宿泊所(休憩所?)。

内部は畳敷きの和室になっている。オレンジにピンクの窓枠から建築当時は相当にモダンな工場だったのだろうことがうかがえる。
(2000年03月18日訪問)