いよいよ今日の最終目的地「最勝洞」へ向かう。禅昌寺の裏から最勝洞へ向かう登山道には五百羅漢が並んでいるので目印になる。
最初の「抜穴」までの所要時間は15分くらいか。写真の様な急な上り坂が続く。
実際には最勝洞と言う名前の洞窟があるわけではなく、複数の洞窟群になっている。あえて言えば「本穴」というのが最勝洞か。
左図のほとんどの洞窟が確認できた。図で細い青線で書かれているのが沢で(断層の跡か?)で、左下写真のようにちょろちょろと水はあるものの、最も洞窟の集まっている奥の院付近は枯れ沢になっている。
最勝洞はチャート質の山にできた洞窟で珍しいものだという。
チャートも石灰岩も海底の生物沈殿物でできる地質である。カルシウムを主成分とした石灰石が水に溶けやすいのに対して、チャートはケイ素(つまりガラスのような成分)を主成分とした岩石で水に溶けにくい。だから鍾乳洞のような洞窟はできにくいということなのだろう。
最初に入ったのは「抜穴」。
内部はこんな感じだ。確かに石灰岩の鍾乳洞とは感じが違う。中は乾いている。
中央右奥の方へ登るようにして進んでいく。
しばらく進むと、両手両足で踏ん張りながら登らなければならない急な場所がある。中央に見える細いすきまが進路で、体をねじりながら通り抜けなければならないほど狭い。洞窟探索でもっとも緊張する瞬間だ。
この細穴を抜けた先には、登ったら降りられないような段差があってそこで進むのはあきらめた。「抜穴」は最後には別な出口に出られるそうだが、装備や服装に自信がなかったので戻ることにした。
続いて「本穴」へ向かう。
「本穴」には地底湖があって、目の退化した微生物などが生息しているという。
本穴の内部。
下りになっていて、足場もいい。「抜穴」と違って、懐中電灯さえあれば容易に見学できるタイプの洞窟だ。
最深部までは 50 m くらいか。地底湖(?)に到着した。
地底湖というより、泉といった感じだ。この部分の横幅は2mくらい。
地底湖の底には木の枝など沈んでいた。表面にはホコリのような藻のようなものが浮かんでいる。
この湖はあまり水位が変わることはないのだそうだ。
途中に脇に降りる小さな穴があったので入ってみる。
この脇穴を降りた先にも地底湖があった。
「本穴」を出て、「奥の院穴」方面へ向かう。「本穴」までは登山道があるが、そこから先は道なき枯れ沢を進んでいかなければならない。
これが「地獄穴」「極楽穴」だ。
内部は落ち葉が積もっていて、足元がずぶずぶとめり込む。どれも20mくらいの穴で、奥には石仏が置かれている。
「奥の院穴」。禅昌寺の奥の院という位置づけなのか? 鍾乳洞で行者が修行するということがあるので、そういう用途に使われたのかもしれない。
洞窟はいずれも見つけやすい場所にあった。最も長いのは「抜穴」で、ちょっとした探検気分が味わえるが、両手が自由になる懐中電灯と滑らない靴は必須である。
「奥の院穴」を出ると時刻はもう6時半になろうとしていた。日の長い5月とはいえ、さすがに辺りはもう暗くなり始めている。急いで山道を下り、車を停めた場所まで戻るころにはすっかり夜になっていた。この日の行程はこれでおしまいだ。
(2002年05月03日訪問)