ミャンマー滞在の最後の日曜日。パアン市内で気になっていた寺に出かけてみた。
ヤンゴン方面からパアン市に入るとき、AH1号線のサルウィン・パアン橋を渡ってすぐに北側に小さな山が見える。この山のふもとに、大して目立たない小さな寺が2ヶ寺ある。まずそこを調べるつもりだ。
とはいえ、山の名前がわからないので三輪タクシーに場所を説明するのがむずかしい。
そこで山のふもとにある高級ホテル「ホテル・ズェガビン」へ送ってもらった。
ホテルには用はないのだけど、写真だけ撮っておくか。
コテージ型式のホテルで、現時点ではパアンで最高級のホテル。
日本からビジネスでパアンを訪れる場合、VIP待遇の役職者はこのホテルに泊まることが多い。周囲が堀に囲まれているので、セキュリティ的にも安心感がある。
ホテルの前は、パアン・モーラミャイン街道で、南へ行けばモーラミャイン、北へ行けばパアン市街である。
これが気になっていた寺のひとつ。ホテル・ズェガビンのすぐ南側にあたる。
山のふもとにがけ崩れのような、あるいは採石場跡のような荒れた山肌があり、そこに金色のパゴダがいくつも建っているのだ。
初めてパアン市に来たときからこれが気になってきた。
ただしミャンマーではどうということのない小さなパゴダである。
そのパゴダへの道を歩きながら、ホテル・ズェガビンに宿泊する大名旅行の外国人は誰一人としてここに近寄ることはないであろうことを確信した。
寺への道はときどき牛糞が落ちているあぜ道であり、治安がいいミャンマーといえども「この道、行っても大丈夫か?」と思えるような風情。
あとで知ったことだが、この右手の水田は懲役囚が役務で農作業をさせられる場所なのだそうだ。
それで不穏な空気が感じられたのか・・・。
おっかなびっくり寺の入口まで来た。
寺の前には貯水池があり、反り橋がかかっている。
この橋を渡るべきか逡巡していたら、ミャンマーの修行僧っぽいお兄ちゃんが寺参りにやってきた。
この寺の僧侶ではなく、どうも家族の遠足かデートといった感じ。
これを見てひとまず安心。この寺は観光で行っても大丈夫そうだ。
寺の建物は屋根や壁が葉っぱできている小屋ひとつだけ。そこここに洗濯した僧衣が干してある。
お坊さんの姿は見えない。小屋の中で休んでいるのだろうか。
小屋の手前の石段のところでサンダルを脱いで裸足で境内に入ることにした。
井戸のそばにも洗濯物。
とにかく生活感が漂っているのだが、なぜか来る者を拒むようなオーラは感じられない。お坊さんが出てきてもボディランゲージでなんとか参拝させてもらえる気がする。この安心感は何なのだろう。
結局、お坊さんは出てこず、わずかな石段を登って、パゴダの近くで礼拝した。
パゴダから小屋を見下ろしたところ。
先に行った修行僧たちの姿が見えない。
もうひとつのパゴダのほうへの参拝路があるのでそっちへ行ったのだろうか。
岩の間を抜けて、もうひとつのパゴダへ行ってみた。
パゴダには電飾が付けられているので、夜に光るのだろう。
パゴダの横に、短い洞窟があり、礼拝所になっていた。
先に行った現地人の女の子と小さな子供が休憩していた。
その女の子が、
「そっちへ行ってごらん、大丈夫、行けるカラ!」
と言って洞窟の支洞を教えてくれた。ミャンマー語だけど、たぶんそういうことを言っていたはず。
そこはしゃがまないと通れない、天井の低い支洞だ。
少し行くと、さらに天井の低い支洞があった。
ここはしゃがんでもきつい高さで、場合によっては四つんばいで進まないと入れそうにない。
ここまで来るあいだに暑さで汗ばんでいたし、服をこれ以上汚したくないのでどうしようか迷っていたら、奥から懐中電灯の明かりが見えてきた。
先に行った修行僧の二人が洞窟探検をしていたのだ。
二人とも無理な姿勢でがんばったせいか、全身汗だく。
妹か彼女かわからないけど、支洞の中のことを説明しているようだった。
「うーん、奥は狭かったゾー。お前には無理ダナ。」てなことでも言っているのだろう。
入ってから出てくるまであまり時間がかかっていないので、深さはあまりないのだろうと思う。
日本から来たということを説明したら、一緒に記念写真を撮ろうということになった。
修行僧はたちはスマートフォンで、私はコンパクトデジカメでお互いに撮影。なんだかミャンマーの修行僧のほうが進んでいる。
いまごろ facebook に「洞窟で変な日本人に会った」と投稿してるかもしれない。
お互い、英語がしゃべれない同士だと、かえって気兼ねがないな。
このパゴダの名前を尋ねたら、チャウワァダと言うらしい。
牛糞がころがっていたあぜ道は、いまはセンターラインのある舗装道路になっている。
(2014年02月16日訪問)