ジャイン・コーカレイ橋と浮橋

老朽化した吊り橋と代替の浮橋。

(ミャンマーカレン州コーカレイ)

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帰路に着く。

きょうは、往路はドゥラン街道・ピタカ街道を通り、復路はチョンドゥ経由でAH1号線を通る。

チョンドゥまではおおむねこんな感じの路盤のしっかりした道か、簡易舗装の道が続く。

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陽が傾きかけたころ、AH1号線へ出た。

AH1号線は、インドシナ半島を横切る経済の大動脈とも言える道路。日本で言えば国道5号→4号→1号→2号→3号みたいな、国土の骨格をなす道路だ。

だが、2019年時点ではコーカレイ⇔エインドゥ区間約60kmの路面状況が悪く、経済活動にも支障が出ている。

写真はチョンドゥ付近で、幅員は狭いがまだマシなあたり。

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この区間でボトルネックのひとつとなっているのが、「ジャイン・コーカレイ橋」と呼ばれる橋だ。ジャイン川のコーカレイ郡区にある橋というような名前だが、コーカレイ町とはかなり離れているのでどちらかといえば「ジャイン・チョンドゥ橋」と呼びたくなる橋。

この橋の東詰め風景。

橋が老朽化していて大型車両を通すのが危険なため、大型車両を迂回させるための分岐がある。

では大型車両はどこを通るのかというと、下写真のような浮き橋。

川に箱船を並べ、その上に鉄板を渡した仮設橋だ。大型車両はこの浮き橋の上をおっかなびっくり通らなければならない。当然、片側通行だ。

AH1号線のカレン州本線区間と、モーラミャイン支線にはこんな危うい橋が3つあり、すべて日本からのODA(円借款)によって掛け替えが計画されている。このジャイン・コーカレイ橋も安藤ハザマが受注し、2020年から3年かけて新橋を建設することになっている。紐付き型ODAには色々な意見があるかもしれないが、こうしたインフラ整備はミャンマーにとっては明らかに役に立っており、切実なものなのはまちがいない。

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現在のジャイン・コーカレイ橋を見てみよう。

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橋ゲタの上に鉄板を乗せただけの吊り橋で、舗装はされていない。構造が弱いため、舗装の重量に耐えられないのだ。そんな状況の橋だから、大型車両の通行は危険なのである。

ただ、他の2つの橋(ジャイン・ザタピン橋、アトラン橋)では、その鉄板さえスノコみたいにスケスケなので、この橋はスキマが空いていないだけまだ走りやすい。

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橋の上から浮橋を見てみた。

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国の大動脈でもう何年もこんな状態が続いているのが、カレン州の実態なのだ。

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浮橋は片側通行だとか、揺れるというようなことが問題になるだけではない。

ジャイン川には堤防がないので、雨季になって増水すると水があふれ出して、橋の両岸の陸地部分が通行できなくなる。そのためこの場所は雨季には頻繁に通行止めになるのだ。もちろん迂回路などない。

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そして現在、さらにひどいのはジャイン川からエインドゥ区間。

この部分はODAで中国の建設会社が舗装をやり直すはずだったが、路面をはぎとったり、橋梁を壊して仮設橋を造ったところで逃亡し、2018年ごろから工事が中断しているのだ。まぁ、中国ODAあるあるなのだが。

2年間放置された路面は目茶苦茶に荒れていて、車高の高い車しか通れない状態になっている。

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きょうはあえてこの悪路を走破して帰ることにしたのだが、このへんはまだ写真を撮っていられるくらいの余裕があったが、ひどいところは砂ぼこりで視界がホワイトアウトするというような状態だった。

未舗装区間を抜け、エインドゥ町でガソリンスタンドに入ったら、全身真っ白になっていて、店員にえらく笑われた。

そんな目茶苦茶な悪路も、2020年にはミャンマー中央政府による工事が入って改善しつつある。橋も掛け替えられればいつかは笑い話として語れる時がくるだろう。そんなときのために、浮き橋の写真も記録しておこうと思う。

(2019年03月10日訪問)

ビルマの竪琴 (新潮文庫)

文庫 – 1959/4/17
竹山 道雄 (著)

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