大正館

かつて富津岬にあった映画館。

(千葉県富津市富津)

これは、2001年のこと、少し古い話になる。

当時私は横浜に住んでいて、海の日の休日に友達と遠出をして何か美味いものでも食べようということで千葉のほうへ来ていた。そこまでは間違いない。でも細かい記憶がはっきりしなくて、食事をしたのは外房のような気もするし、帰路は金谷から久里浜のフェリーを利用したような気もするし、どんなルートで移動してたのかはまったく覚えていない。

でも夕刻に、富津公園に立ち寄ったことだけは間違いない。

この日撮影した写真はこれから紹介する数枚だけなのだが、この地点は富津市を通過して房総半島へ向かう道からは外れていて、明らかに富津公園のほうへ入った場所だからだ。

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国道16号線の終点から、少し富津公園のほうに入ったところに古い町並みがある。成り立ちからすれば漁村であったろう。

その中央の街道沿いに古い映画館を見かけたので、車をとめて写真を撮った。

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正面はトタン板で覆った看板建築になっているけれど、背後は木造で、確実に戦前くらいまで行きそうな風情。

名前が「大正館」なので、大正時代に建った建物と考えていいだろう。ということは、これは映画館として建ったものではなく、芝居小屋として建てられたものということになる。

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屋根の棟にある換気塔がかっこいい。

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古い映画館というと、倉庫や工場などに転用されているものが多いが、これは原型を留めていて、他の用途で使われた様子がまったくない。

もしかして、いまでも時々使われているのでは? などと思えるくらいの状態だった。

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建物の横から少しのぞいてみた。

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切符販売所。

ん~、これはさすがに最近まで営業していたというシロモノじゃないな。

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入場料は大人300円、学割250円、中学生200円、小学生150円、ビラ下150円という安さ。

「ビラ下」とは、映画ポスターを家の壁などに貼らせてもらう謝礼として映画館が配布する割引券のこと。

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中を覗いてみると座席などはほぼ原型を留めていると思われた。

調べてみるとこの映画館はやはり大正8年に芝居小屋として建てられ、途中から映画館に改造されたもので、1階席270席、2階席は芝居小屋のまま畳敷きだったそうだ。

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昭和初期の劇場建築の様子がわかる、すっごく貴重な建物だと思う。

だが、残念ながら2020年に千葉のほうへ出かけたときに確認したら更地になっていた。

(2001年07月18日訪問)