洞雲寺。仙台北部の小さな谷戸の中にある寺。
寺の前は自動車のディーラーや郊外レストランなどが続く四車線の国道。寺の周囲360度は戸建て住宅がびっしりと並ぶニュータウン。その中に取り残されたように寺がある。
地図を見ると息苦しくなるような空間なのだが、谷の中に入ると緑しか見えない別世界だ。
参道の入り口付近に墓地と駐車場がある。駐車場に車を置き、歩いて本堂方面へ向かう。
道の西側は崖になっている。この谷戸にも小さな川はあるがその侵食でできたとも思えないので、海食によって出来た崖なのではないだろうか。
途中には海食洞窟のような穴もあった。
坐禅窟と書かれていたが取りつく方法はなさそうだ。
本堂の前の石門を入って右側には鎮守社の秋葉社がある。
古い建物ではなさそうだがなかなか端正な造りである。
本堂はRC造。
柱や梁はコンクリート打ちっ放し。打ちっ放しといっても荒っぽい作りではなく、垂木や肘木もちゃんと作り込んである。結果として成功しているかどうかは別として、在来的な仏教建築の意匠をコンクリ打ちっ放しで再現した建築としてはこれ以上は望めないのではないだろうか。潔い本堂である。
本堂の右側には渡り廊下がつながっていて山上になにやら堂が見えた。
近づけないので確認はできなかったが位牌堂ではないかと思う。
本堂の左側には鐘堂。
本堂の左側を通って裏に廻ると太鼓橋があり、庫裏、書院がある。こちらは木造モルタル、銅盤葺き。
駐車場のあたりに戻ってくると横穴が二つあることに気付いた。
ひとつは稲荷社。
奥行は1m程度だ。
もう一つは観音霊場と書かれている。深さは少なくとも20mくらいありそうだ。
残念ながら入り口には鍵がかかっていたので内部はお見せできない‥‥。
突き当たりには石仏のようなものがあった‥‥。
この洞雲寺という寺、あらためて寺の空間とはなにかと考えさせられるような場所だった。確かに谷戸の中だけは緑は残され、湧き水が小川になって流れ、一見するとオアシスのような場所なのだが、周囲の開発の仕方が圧倒的すぎる。寺の敷地だけ樹を伐採しないで残しましたという開発の仕方であり、谷戸や里山の自然をまったく相容れないものとして扱っているのだ。森と周囲の宅地を連続した空間として開発できなかったのだろうか。
(2001年09月24日訪問)