だが、その有り様は写真のごとし。目を疑った。
四角い水源で外壁は石垣になっている。北側には小さな石祠が祀られていて、よくあるコンクリートの池のような味気なさは感じない。
アンドレイ・タルコフスキーの映画「ノスタルジア」のラストシーンに登場する温泉を彷彿とさせる湧水で、私はかなり気に入っていただけに、この光景にはショックが隠せなかった。
かつては石垣が白く見える部分まで水があったのである。祠が水没しないように作られていただろうから、おそらく何十年と水位が変化することはなかったのだろう。
それが今はまったく湧いている気配はない。雨水が溜まっているだけだ。
重殿水源から流れ出た水は、横の用水路へと入る。この地点が一級河川大川の水源と書かれているが、1滴の水も流れていなかった。
写真中央にみえる白い箱は水量を測定しているセンサーらしいが、これではまったく測定にならないであろう。
前回訪れたときの様子。
人々の生活の中に取り込まれ、水神の祠が祀られている景観は、他の水源に比べて歴史を感じさせるものだった。
このときも、石垣に白い帯が若干見られるが、水面は石祠のぎりぎりまできているのがわかる。
もちろん水は清廉そのもの。水底の砂がハッキリと見えていた。
4つ上の写真と同じポイント。
池からあふれた水が勢いよく流れ出ていた。
この光景を見ることはもうできないのだろうか。とても気掛かりだ。
(2004年08月31日訪問)