湧水巡り最後のポイント。羅釜(らかま)の湧水。
弁天湧水から西に 400 m くらいの田んぼの真ん中の交差点にある。
私たちが訪れたとき、交差点に車が停まっており、一人の男性が湧水を観察していた。
「ん? 湧水マニアのお友達発見か?」
と色めき立ったが、この湧水の柵などを施工した業者さんが台風のあとの様子をチェックしにきていたのであった。
周りはまだ新しい柵で囲まれており、他の湧水の味気ない金網の柵から比べればまだ親しみが持てる。
だが、水質は見ての通り。
周囲の水田の水が滲み出しているだけではないだろうか‥‥。
これまでみた湧水が井戸か池のような構造であり、ポンプで水を汲み上げていたのに対し、この羅釜の湧水は水船のような構造になっている。つまり水枡からが溢れ出るようになっているのだ。
もっとも現在は溢れ出るのだか、逆に水路から流れ込んでいるのだかわからない状況になっている。
この湧水を見ているうちにちょうど日が地平線に沈んでいった。
新田町は空の広い土地である。
沈む太陽のわずか左に見えるのが浅間山。この次の日に噴火したが、このときにはまだ普段と変わらないシルエットを見せていた。
こうして新田荘の湧水巡りは終わった。総括するならばショッキングとしか言いようがない。重殿水源を代表とする海抜 60 m 付近の湧水は壊滅状態であり、55 m 付近も危機的な状況にある。今年は空梅雨だったので特に水が少なかったとも考えられるが、近年の東毛地方の工業発展も地下水の水位の低下には無関係とは言えないだろう。10 年後にまた訪れてみるつもりだが、その時のことを想像すると明るい気持ちにはなれないのだった。
(2004年08月31日訪問)