蓑毛から少し下った集落、竹ノ内付近で見かけた火の見櫓。
手前に田んぼがあり、田植えのすんだ水面に端正な姿が映っていた。あたりはすでに夕方の色にそまっていて、こういう時間帯のシルエットになった火の見櫓が私は好きなのである。
屋根の形が鋭利な直線で構成されているのが特徴。こうしたとがった屋根はたまにあるが、ここまで鋭くとがっているのも珍しいのではないか。
この日はあまり予定も立てないで出かけたが、結局は水車を巡る小旅行という結果になった。本格的に調べたわけではないから、その気になって探せば西相模には非稼働の水車小屋はまだ見つかるだろうと思う。またこの地方にはたくさんの湧水があるし、平将門の伝説を巡る半日くらいの小旅行をすることもできる。紹介すべきものはまだまだあるのだが、関西に移り住んだ今となっては、もうその機会は巡ってこないだろう。
そう思いながらこの夕暮れの秦野の風景を見るのは切ない。神奈川で過ごした日々がもう手の届かない遠いところに行ってしまったのだという事実、ことさらに考えたこともなかったその事実が夕焼けの色によって呼び覚まされるのである。
(2001年06月03日訪問)