榛名湖の放水路でもある沼尾川、その崖線になにやら砕石工場の廃虚のようなものがある。
これは県道35号線(通称、ひかげみち)からもよく見えるので気になっていた遺跡だ。険しい場所にあるので、じっくり見るにはそれなりの覚悟が必要そうだが、せっかく近くまで来たのだから写真だけでも撮ることにした。
目立つのは県道からの引き込み道路に作られた基礎。上部にあった機械類は撤去されているので、想像するしかないのだが、崖上から投入した原石を受け止めるホッパーと、おおまかに砕く1次破砕機があったのではないかと思う。
この屋根のような部分の左側が道路になっているので、1次破砕機を通った砕石をダンプトラック積み込むためのフィーダーがあったのかもしれない。右側には2次破砕機があったのではないかと思われる基礎の跡がある。
ホッパーの上に「慰霊の塔」と書かれた石碑が見える。
この工場の操業中に亡くなった人がいたのか、あるいは、廃虚になってから亡くなった人がいたのか…
1枚目の写真で、ホッパーの直下あたりにみえるトンネルのようなもののアップ。
1次破砕機で砕かれた原石を2次破砕機でさらに細かく砕き、サイズ別に分別された製品の取り出し口のフィーダーではないかと思う。破砕された石は、地中の立坑に備蓄され、このフィーダーから一定量ずつベルトコンベアに載せられて取り出されたのではないか。
1枚目の写真で、ホッパーの右ななめ下に見えるフィーダーのようなもののアップ。
これも2次破砕機で砕かれた砕石を取り出すためのものだろう。この写真からはわかりにくいがフィーダーの上に鋼板で作られたホッパーようなものが見える。
崖のかなり高い位置にあるので、このあとコンベアなどで他の設備とつながっていたはずだ。
近くまで行ってみることにした。
途中は、県道35号線の廃道だ。沼尾川にかかる橋梁の位置が現在とはちがっていたのだろう。車止めはあるが、歩いて進むことはできる。廃道好きにはたまらない雰囲気の場所。
1次破砕機のフィーダー部分と思われる場所まで行くことができる。
こうしてみると、ここから車載できたかどうかは少し微妙な感じもする。
その先にある2次破砕機の跡と思われる場所。足場は無くなっているので歩いて降りることはできない。
こういう設備をみて、どういう働きをしていたのかわかったらおもしろいだろうと思う。いまは稚蚕飼育について調べているが、実はいつか鉱山や鉱業の施設の見方をおぼえたいと思っている。
ところで、この廃虚について調べていてひとつ気になったネタがある。
『行旅死亡人データベース』というすばらしいサイトがある。そのサイトの過去ログ、平成18年10月26日号に「平成6年5月10日午後9時24分渋川市祖母島2107番地1の採石場跡地南西隅崖下で発見された」とされる行旅死亡人についての情報がある。行旅死亡人とは、ありていにいえば行き倒れ、身元不明の死者のことだ。この発見場所は、この廃虚の崖下ではないだろうか。
性別は女性、発見時には白骨化していて、所持品には中国の硬貨が入っていたという。不法に就労していた中国人のホステスだったのだろうか。自殺なのか他殺なのかもわからず、異国の地で最後をとげた死者の思いはどんなものなのだろう。
(2008年05月01日訪問)