土室のある農家を見学したあと、谷の集落を車でまわりながら、なにか面白いものがないかチェックした。そのときに偶然みつけた稚蚕共同飼育所。
現在は、農家の倉庫として使われている。ガラス戸が多く中がよく見えるのだが、室は取り外されて大部屋の倉庫になってしまっていたので、外見のみ撮影。
この写真は東側で、挫桑室になっていた。おそらく地下に貯桑場があるのではないだろうか。
真壁で繊細な印象の建物だ。
この建物を作った大工は、柱や小屋組みを外から見えるようにすることで、幾何学的なリズムと白黒のコントラストをこの建物に与えたのだ。昔の大工は設計図など書かなくてもそういう仕事をしていたのである。
西側には外部にトイレが作られていた。通常であれば、この妻側には配蚕口として大きな開口があるはずなのだが、斜面にあるため戸口は控えめな大きさになっていた。配蚕は稚蚕飼育所いちばんの大仕事で、すばやこなさなければならない。蚕を運び出す担当者は一人ではなく、数人が行ったり来たりするので大きな入口が必要なのだ。
この飼育所は平入りだったのではないだろうか。
南側には消毒槽があった。
基礎には土管が出ているのが見える。この飼育所が土室育だったことのあかしだ。
(2010年02月20日訪問)