安中市に稚蚕人工飼料製造用の桑園があり、その跡地は安中総合学園高校の演習農園になっていたというような話を聞いたことがあった。だがその施設がいまでも存在するとは思っていなかったので、まともに場所を調べたことがなかった。ところが最近になって、この跡地を工業団地に転用するというニュースがあり場所が判明した。
行って見ると、そこは何度も通ったことがある場所だった。道路が崖下を通っていたため、見えなかったのだ。
以前は葛や雑木が生い茂っていて近寄りがたい丘だったのだが、工事の準備で雑木がすべて刈り払われて、かつての桑園の跡が露出していた。
敷地は写真のカラーの部分で、約12ヘクタールある。
これだけのひと続きの平地が死蔵されていたのだから、ちょっとびっくりである。
敷地に入る道路にはトラロープが張られていて、関係者外ノ出入禁止と書かれていたが、もう意味もなかろうと思い、勝手に立ち入ることにした。
それにしてもなんという広大な風景。
1枚の畑が100m x 100mある。
遠くに見える農機具倉庫は、安中総合学園高校の建物だ。
安中総合学園高校は、以前は「県立蚕糸高校」という名前で「蚕糸科」というコースもあった。学校の場所を言うとき「蚕糸高校」と言えばいまでも通じる。現在は普通科と農業や工業が併合されたなんでもありの高校になっている。
桑は放置すると数年で家ほどの大きさになってしまうので、おそらく閉園したあと除草剤などで枯らされていたのではないかと思う。
桑の根がはっきり確認できる場所が少なかったので、確かなことは言えないが、金古の人工飼料センターの桑園のような2条植えにはなっていなかったようだった。
株から枝が出ているところは地面すれすれなので、極端な根刈りだったことは金古の桑園と同じ。
一角には事務所の建物が残っている。
表札は「群馬県稚蚕人工飼料センター安中管理事務所」となっている。
浅間山を背にした、人工飼料センターの姿。いまはもう見ることはできない。
2013年6月現在、工業団地の造成が始まっていて、建物は取り壊されてしまった。
事務所の建物。
事務所というより、住宅のような感じの造りだ。収穫シーズンには担当者が寝泊まりしたのかもしれない。
これはおそらく農具倉庫。
この場所では人工飼料の加工は行わず、桑を刈り取って金古へ運んでいたのではないかと思う。
(2012年12月24日訪問)