洞窟を出て階段を下りてゆくと、そこにはため息が出るような美しい沼があった。
どうもこの場所に来るには、鍾乳洞の中を通るか、舟で来るしかないようだった。
沼のほとりには茶店があった。
洞窟の中を歩いて少し汗ばむくらいだったので、ここで冷たい飲み物を飲みながらひと休み。
この場所はただ景色を眺めるだけでなく、船頭つきの丸木舟で遊覧することができる。
舟をチャーターして沼に漕ぎ出すことになった。
ただし、見てもわかるとおり喫水線から上に数センチしか出ていない丸木舟で安定も悪そう。水に弱いデジカメやらスマートフォンを持ったまま乗るのは冷や汗モノだった。
職場の世話人の姪っ子さんがまず舳先に後ろ向きに座った。
お客3人と船頭1人の、合計4人がこんな舟に乗って沈まないのが不思議だ。
乗船のときにちょっと浸水した・・・。
全員が乗船すると喫水線から上には2~3cmしか出ておらず、バランスを崩さないように必死に呼吸をととのえる。
しばらくすると徐々に慣れてきて、まわりの景色を見る余裕も出てきた。
舟は漕ぎ出すとすぐに岩の壁のほうへ向かっていく。
岸からは見えなかったのだが、この岸壁の下にはすき間があいて洞窟になっている。
その洞窟に舟で入って行けるのだ。
舟を漕ぐ櫓の音が、ちゃぷん、ちゃぷん、と天井に反響する。
天井は触れるくらいの高さしかない。
この洞窟も鍾乳洞なのだった。
そしてなんと、この洞窟も山の反対側まで抜けている。
つまり、サダンケーブは洞窟で山を通り抜けて沼へ、そこからまた舟で山を通り抜けることができるのだ。
2つ目の沼はサダンケーブの入口の側に位置している。地中を行って戻ってきたことになる。
2つ目の沼のほうが水が澄んでいる。
ここは舟に乗った者だけが見ることのできる秘密の場所だ。
漁家だろうか。岸辺には一軒の粗末な家があった。
船頭は無口だが、景観が美しいのでまったく気にはならない。
そのまま2つめの沼をひとまわりしてくれた。
再び、洞窟を通って1つ目の沼に戻る。
水鏡に映し出された対称の風景。
今度は1つ目の沼をひとまわりしてくれる。
沼の真ん中にはホテイアオイを育てていると思われる柵があった。水の上の花壇だ。
奥にはサダンケーブの出口が口を開けているのが見える。
洞窟を通り抜けないと行けない場所があるというのは、私が一番好きな洞窟のパターンである。
それが二段重ねになっているのだからまったくもってたまらない場所である。
帰路。
もういちど洞窟を通って戻るしかない。
観光で来ていた現地の若い子たちが洞窟の一角に集まって何かをしていたので行ってみた。
石筍を削っている。
みんなが削るために大きな穴が空いてしまっている。
何なのかは聞かなかったが、想像するに、この粉を飲むと病気にならないとか、そういうまじないではないかと思う。
と、言うのも洞窟を出たところで粘土をもらったからだ。
洞窟の入口まで戻ってきたら受付のお坊さんが、
「あんたたちニホンジンか、じゃあこれをアゲルヨ」
といって、袋に小分けされた粘土を持たせてくれた。
これはこの洞窟内でしか採れない漢方薬らしい。「チャゥットゥェ(石の血)」というもので、はちみつなどと一緒にお湯で溶いて飲むと不眠症に効くのだとか。
買ったら高いらしい。まさかとは思うが、石化したコウモリのウンチじゃないよね?
飲むのはためらわれたので、お土産に持って帰って家宝にすることに。
トイレ。
少し高くなっているのは、雨季に水没するからかもしれない。
帰り道、スピーカーから大音量でお経を流す騒々しいトラックとすれ違った。
トラックの荷台には仏像が並んでいる。ミャンマー滞在中、何回かこんなトラックを見かけた。
市街地から遠かったり、交通の便の悪いところにある寺院が、寄進を集めるための
サダンケーブの遊覧池の最新の状況については再訪の記事を参照のこと。多少状況が変わっている。
(2014年02月09日訪問)