次なる目的地は、パアン工科大の裏にある小山の山頂のパゴダだ。
この山はパアン市の市内からも見え、夜には山頂のパゴダがライトアップされているのみならず、登山道に点々と明かりがともって見えることから、下手をすれば夜間参詣も可能なのではないかと思われるパゴダなのである。
山頂には少なくとも、パゴダのほかに屋根のある建物が見える。
展望台か僧房ではないかと思うのだが。
先ほど訪れた田んぼの中のパゴダから、山麓を左回りに巻いてゆくことにする。
山すその南側には鍾乳洞らしきものがあった。
狭くて普通の服装では入れそうにないが、ここがもし日本で、洞窟好きの人ならば這ってでも入るんだろうな。
山すその東側まで来たら僧院があった。トイレを借りるために入ることにする。
名前は「ジェーダタンチー僧院」。「タン」は「山」、「チー」は「足」なので、「ジェーダ山麓の僧院」というような意味になる。私が登ろうとしてる山は「ジェーダ山」という名前なのだろうか。
塀に囲まれたパゴダがあった。
パゴダの門は閉じられているので、無理に入るのはやめておいた。
八曜日の本尊はパゴダのやや高い位置にある。パゴダの平面が八角形になっていて各面に埋め込まれているのだ。
通常は四角形の基壇の四隅と四辺に配置されているのが一般的。
僧房。
修行僧が寝泊まりする建物ではないか。
回廊が続いている。
その回廊の先には別の建物。
たぶん、講堂か食堂ではないかと思う。
たぶん僧侶用のトイレ。
たぶん修行僧用のトイレ。
こちらを借りた。
実はこの僧院、建物にチョークで説明が書かれており、トイレには一部英語(?)と思われる注意書きもあるのだが、ちょっとスペルが読み取れなかった。
ただ、寺の付属建物の勉強にはなりそう。
ドアにミャンマー語で「 မီးစက်ရုံ 」と書かれている。
直訳すると「火の工房」? 燃料置き場だろうか。
そのすぐ裏には、奇岩の崖がある。
岩の質感が、テーマパークのイミテーションの岩石みたいだ。
岩窟にもなっているのだが、内部には仏像やパゴダなどはない。
少し高いところに小奇麗な建物があった。用途はよくわからない。
どうやらこの僧院の中には山頂への登山路はなさそうだ。
境内にある瞑想用の個室。だとすれば「座禅堂」と呼んでも差し支えないかもしれない。
この僧院には総門が二つあった。
どちらが正門でどちらが裏門なのかはわからないが、帰り道には別な門から出てみたら、子供たちがめずらしそうに集まってきた。
ふたたび、小山を左回りに巻いてゆく。
周囲は森で、農家のような家が点々と続いている。
これまでの経験から、それなりのパゴダなら登山口に総門があるだろうから総門を探さなければならないのだが、樹が多く見通しが利かない。
山すその北側では井戸を見かけた。
奥に水盤舎が見えるが、たぶんこれはパゴダの入口ではないよなあ・・・。
山から離れないように、とにかく左へ左へと路地を進む。でもこんなところに登山路があるとも思えず。
この道でツマベニチョウや、鮮やかなグリーンのヘビを見た。
生活していたのが町の中で乾季ということもあり、ミャンマーに来てから小動物をほとんど見かけなかったのだが、この場所には生き物の気配が濃かった。日本でも農村や里山に小動物が多いのと同じなのだろう。
二子山の鞍部を超える。
あれ?
山をひと回りして、最初の場所に戻ってしまった。
見覚えのあるワラグロがある。
これは乾季にこんなふうに家畜に食べさせるものだ。
結局、登山路はどこにあるのか見つけられなかった。
見落としたとしたら井戸のあったあたりで、人家への入口に見えた路地が実は参道だったということだろうか。
戻って確認するにはちょっと疲れが出てきていた。何しろ、来るときは町外れまでタクシーで来たのだが、今度は町まで帰らなければならないのだ。
暑くて埃っぽい道をとぼとぼと町のほうへ向かって歩いていたら、オートバイに乗ったお兄ちゃんが来て、「オレ、タクシーだよ、乗ル?」と、オートバイの後部シートを指差している。
こんな農村の路地で流しのタクシーを拾えるなんてラッキーすぎる。いや、タクシーじゃなくてただのお兄ちゃんなのかも知れないがとにかく渡りに舟で助かった。
英語がまったく通じないお兄ちゃんだったが、私もパアンの地理がだいたいわかってきていたので、指さししながらホテルまで帰り着けたのだった。
以上が、パアン市に滞在した1ヶ月のあいだの寺参りの記録である。
最後の日は大した寺は見なかったのだが、実は一番充実していたような気がする。誰もが行くような有名な観光寺院ではなく、道ばたの小さな寺々をひとつひとつ巡るのは、ものすごい征服感があるのだ。最後の最後に徒歩で田舎を歩いてみてよかった。
こうしてレポートを書いてみると、ミャンマーの寺にはわからないことがまだたくさんある。実はパアン市へはまた仕事で行くことになりそうなので、今度はもう少し詳しくお寺のことを調べたいと思う。
(2014年02月16日訪問)