エインドゥの賃織り

個人の家の1階で機を織っていた。

(ミャンマーカレン州パアン)

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AH1号線に戻った。よく知っている風景。

そういえばここを通るたびに気になっている家があったな。せっかくだから立ち寄ってみよう。

ついさっきまでは夕立が来そうで早く帰らねばと思っていたのに、早くも寄り道。

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これがその家。カレン州によくある高床住宅である。

その床下に高機(たかばた)が見えるのが気になっていたのだ。

「こんにちわーちょっと(はた)みせて」

もちろん、見ず知らずの家。

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家の娘さんだろうか。ちょうど布を織っているところだった。

織っているのは幅のせまいシャンバッグ用の布。糸はたぶんコットンだと思う。以前にパアンで見たブティックでみた商品はこの村で織られていたんだ。

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機の見方は正直あまり詳しくなく・・・。

綜絖(そうこう)は全部で9枚、うち2枚は金綜絖(かねそうこう)、7枚が糸綜絖。ペダルで上下するのは金綜絖だけで、糸綜絖は手でつまみ上げるのだと思う。()は「飛び杼」でかなり早く織っている。

このことから、この織物は地紋などのない平織りで、ほとんどの部分は無地か縦縞、所々に糸綜絖のシカケで複雑な模様を入れるのだろう。糸綜絖を使うところは極端に効率が落ちるので、面積は少ししかないと思う。

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この機が面白いのは、タテ糸がドラムから送り出されるところ。

つまりこの高機はドラム整経(せいけい)機も兼ねているのだ。タテ糸を準備するときは手前側からドラムに巻いてゆき、織るときは逆にドラムを解いてゆくのである。パアンで見かけた高機はすべてこのタイプだった。

置き場所は取りそうだけどけっこう合理的な機だと思う。パアンでは一式3万円くらいで買えるらしい。もちろん木材や仕上げはそれなりだが。

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カセをかける車。「五光」、「ふわり」などとも呼ばれる道具。糸はカセという形で流通するが、そのままでは扱いにくいので、カセ車にひっかけて他のボビンなどに巻き直して使う。

これはヨコ糸を杼に巻いているところだろう。2本の糸を一つの杼に巻いているようだ。

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カセ車と管巻き器。

巻き取る側の道具。自転車のリムを使って作られていた。

特に変わった点はないと思う。この道具の構造は万国共通なのだろうか。

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突然の訪問にイヤな顔もせず、いろいろ見せてくれたおばちゃんありがとう。

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しかも帰り際に「これウチで作ってるバッグだからあげる」と、シャンバッグをプレゼントされた。

見ず知らずの旅行者に、売り物をくれるなんてなんて親切なおばちゃんなんだ。

後日、またこっちの方面を通ったとき、日本から持ってきたガーナチョコレートと和物雑貨をお返しした。

途中で寄り道したため、結局帰り道で夕立に遭ってしまった。

でも国道沿いなので茶店や駄菓子屋はたくさんある。雨足が強くなるたび、そんなお店で雨宿りを繰り返してパアンまで戻ったのであった。

(2014年11月08日訪問)