11月の上旬、ミャンマーは乾季であり一年で最も過ごしやすいシーズンになる。ところがヤンゴン空港に降り立った夜から雨。その雨は勤務地のパアンに向かうあいだも降り続いていたのだった。良い季節、と聞いていたので少し期待外れである。
だが、現地に着いてみると雨のせいで気球祭り(ザダウンダイン・ボエードー)が順延になっていた。今回の仕事の派遣スケジュールから外れていた祭りを、雨のおかげで観ることができたのである。
カレン州の生活は日本でいうと昭和30年代くらいのイメージだ。テレビやビデオゲーム、スマートフォンが徐々に普及しているとはいえ、祭りは田舎の若者たちにとっていまも重要な娯楽である。
祭りの会場にはたくさんの露店が出て、普段売っていないような日用品や玩具が並ぶ。移動式の遊園地が開かれ、キックボクシングの試合、民族舞踊のコンクールやアイドルのコンサートなどが深夜まで続く。若い子たちもクタクタになるまで夜遊びをする特別な日々なのだ。その祭りの喧騒に包まれていると、外国にいるというよりも、子どものころ経験した祭りの空間にタイムスリップしたような感覚にとらわれてしまうのだった。