11月10日月曜日、平日である。この日、職場の子がひとりダンスコンクールのために休暇をとっていた。
「え? ダンスコンクールは先週末あったんじゃないの?」
「きょうが本番よ!」
先週末、夜遅くまで観覧したダンスが今夜も行われるらしいのだ。しかもきょうはカレン州の日の本番で最高潮に盛り上がるとのこと。
職場の子のチームが出場するというのでは応援しに行かねばなるまい。
職場の子の出番は最後のほうだというので、夜の9時過ぎくらいに会場に行ってみた。
ステージからは大音量のダンスミュージックが流れ、観覧席はほぼ満席。少し後ろのほうでやっと空席を見つけ、座ることができた。途中から見るとはいえ、おそらくまだ2~3時間は続くであろうこのコンクール、立って観覧するのはちょっとしんどい。
ダンスの流れは、まずステージ中央奥におかれた銅鼓を打ち鳴らし、水牛の角笛を吹くところから始まる。
次にひとりの女の子が進み出て、アカペラで唄う。ビルマ語なのか、カレン語なのかはわからないが、女性らしいしぐさから想像するに恋の歌なのではないかと思う。
その歌が終わると、激しいリズムの演奏が始まり、揃いの民族衣装を身に着けたダンサーがソデから現れて踊り出す。
踊りにには男おどりと女おどりがあり、それぞれのチームが独自の複雑な振り付けを競う。演奏は二拍子のリズムで全体的に阿波踊りによく似ている。
別のチームのダンス。
最初のソロの女の子はおそらくチーム内でも特に可愛らしい子が抜擢されるのだろう。花形であり、パアンっ子のあこがれの的のはずだ。
女性のポーズが艶っぽく、男性の踊りはエネルギッシュというのは万国共通なのだ。
別のチーム。
それぞれに統一されたユニフォームの華やかさも見ものだ。ただしこれらのユニフォームの素材や紋様が伝統的なものなのかは微妙なところ。
カレン民族のスカートは、横縞が伝統的であり、ひし形や折れ線は最近使うようになったモチーフだという話も聞く。
音楽も音階が西洋音楽的であり、どのくらいの歴史があるのかはわからない。
11時すぎに職場の子のチームの演舞が終わったので、コンクール会場を抜け出した。なにしろ先週末にも飽きるほどダンスは観覧したし、月曜日からあまり夜更かしはしたくない。
だがこの夜は、ダンスの応援以外にももう一つの目的があった。それは、移動遊園地の観覧車に乗ること。あの高速で回転する観覧車を初体験するのだ。
祭り会場の規模は週末よりずっと大きくなっていた。テント式のライブ会場が新たに2棟建ち、芸能人(?)のコンサートをしていた。遊具もフライングパイレーツは2台、観覧車は3台に増えている。ひとつの会場に観覧車が3台もあることから、観覧車は人気の乗り物だということがよくわかる。
その中でも一番大きな観覧車を目指す。
さて、ミャンマーの観覧車の最大の特徴は、電飾はされているが回転動力がないことである。客の乗り降りの際、乗客の重さで勝手に回転してしまわないように、係員が必死に押さえている。
ゴンドラは4人乗りで、人数が足りない場合は相席となる。
そして全部のゴンドラが客で満員になるまで、回転は始めないのだ。
初めのほうに乗ると、ゴンドラが埋まるまで宙ぶらりんの状態で待つことになる。
客が埋まらなければ係員のオニイチャンが呼び込みを始めるというノンキさ。
ゴンドラの骨組みは児童公園のブランコなみの細い鉄筋だし、乗降口に扉はなく、足下はスカスカ。当然安全ベルトなんてものもない。この状態で宙ぶらりんになっているだけでも手のひらが汗ばんでくる。ミャンマーっ子たちも手すりを握りしめている。
ゴンドラが全席埋まると、オニイチャンたちが観覧車のスポークをよじ登り始める。
なんとこのオニイチャンたちの命知らずの体重移動で観覧車を回すのだ。
全員がてっぺんまで登り切ると、ホイッスルの合図とともに、オニイチャンたちはひとりずつ片側のゴンドラの下にぶら下がっていく。
最後のほうになるとすでにホイールが回転を始めているので、まるで蜘蛛みたいにスポークを伝いながらゴンドラに飛び移らなければならず、ほとんどサーカスだ。
ぐぅぅぅぅーーーん
ホイールが高速で回転を始め、地面がすごい勢いで近づいてくる。
1回50円なので何回も乗りたいくらいなのだが、なにしろ回転をしている時間に比べて、待っている時間が長すぎる。公園の他の様子を見ながら帰ることにしよう。時間ももう12時になろうとしている。
先週の昼間に見たときにはあまり人がいなかったフライングパイレーツもそれなりに動いていた。
バルーン式の滑り台。
ミャンマーの祭りでは定番の遊具。
観覧車の上から写してみた。
写真スタジオ。
ミャンマー人は写真好き。
コンサート会場。
こちらはたぶん男性アイドルグループじゃないかと思う。
コンサート会場は2棟あって、こちらは美川憲一的な歌手。
観覧車からはコンサート会場が覗けた。
かなり人が入っている。
日本ではいま私が住んでいるさびれた地方都市では想像できないような活気、にぎやかな田舎町だ。こんなにたくさんの若者のエネルギーが渦巻いているというのは少しうらやましい気がする。
それでも夜中の12時をすぎれば、さすがに遊び疲れるのか、会場のそこここに気だるい空気が流れ始めていた。
串揚げ(おでん?)屋のおっさんも少し暇そう。
お店を出した家族も、もう商品が売れなくてだらだらとしているのだった。
(2014年11月10日訪問)