シュエシンタイ機業場や絹織物ショップが集まるアマラプラの中心街から南へ200mほど。レイスゥ通りという道に、庭先で糸を干している場所があった。
なんだろう。
タコ糸よりちょっと太いくらいのロープみたいなものだ。
働いている人に訊いてみたら、灯心だという。
以前、アミターヤマ寺院の灯明祭りで見たヒモはこうやって国内で作られていたのか。
ダディンジュやダザウンモンといった満月祭でも、道端に灯明をつけるので、かなりの需要はあるのだろうな。
すぐ近くにこの糸を作っている撚糸工場があるというのでお邪魔させてもらった。
撚糸加工部門では、いままさに灯心を製造しているところだった。
ミャンマーでは綿花栽培はほとんどないはずだから、木綿糸の原料は中国やインドあたりから陸路で輸入してきているのだろう。
この男の人が
糸の原料はほとんどの場合、綛の荷姿で取引される。
綛はそのままでは撚糸の機械にセットすることはできず、いったんボビンなどに巻き直さなければならない。
それを巻き直すのがこの綛繰り機という機械。木綿は毛足が短いのでどうしても機械が綿ぼこりまみれになりがち。見学者が来たからか、ほうきで掃き掃除を始めた。
ボビンに巻かれた木綿糸が、灯心の糸になる過程を見ていこう。
原料となる木綿糸は細いので、それを何本か束ねて灯心に適した太さにする。これを
ただ引きそろえただけでは糸がばらけてくるので、それに撚りをかけて太い一本の糸にする。その行程を
ボビンから解かれた糸は天井から吊るされた竹の上を通って、撚糸機へと導かれる。
糸の通る場所を
ボビンから誘導された糸はローラーによって一定のゆっくりとした速度で次の巻き取り側のボビンへと送られる。
下部には高速で回転するボビンがあり、そこに糸が巻き取られている。
だがローラーはゆっくりと回転しているので、ボビンに巻き取られる速度は遅い。ボビンの端で糸が空回りすることになり、その回転で糸に撚りがかかるのだ。
使っている撚糸機の種類は、リング撚糸機。半分木製の撚糸機で、訊いたところではミャンマー国内で製造した機械だそうだ。
想像だが、かつてミャンマーの絹産業が上流から下流まで機能していた時代に、この工場では生糸の撚糸をしていたのではないかと思う。その後、経済制裁などでミャンマー国内の蚕糸業が崩壊、現在は中国から完成品の絹糸を輸入するようになり、用済みになった撚糸工場で灯心の製造を手がけたのではないか。
動力は床下にプーリーが通っており、そこからベルトで撚糸機に供給されていた。
スピンドルと呼ばれる軸部分へのベルトは頼りないほど細い木綿糸で作られていた。
こんなだと、頻繁に切れるのではないだろうか。
撚糸に使われると思われる木管。
これは撚糸が終わったボビンと思われる。
二種類のボビンが使われているのは、機械が違うからか。あるいは、2工程で撚糸(
これは綛上げ機という道具。
ボビンに撚糸した糸は、蒸し器などで撚り止めされるが、出荷するときにはまた綛の荷姿に戻さなければならない。先ほど庭で干していたのも綛状になった灯心だった。
この工場のもう一つの加工部門。
木綿の色糸をチーズ紙管に巻いて小売用の商品を作っている。
ここでも、チーズ巻き機には綛を直接セットできないので、いったん綛繰り機でコーン紙管に巻き直す。
これがコーン紙管。
糸を解きやすいように、テーパーの付いたボビンである。
こうした機械がたくさんあり、ほとんどが動作していた。
この工場は、もともとは絹糸を撚糸し、小売用のチーズ巻きを作っていたのかもしれない。
巻き上げたチーズ紙管は3巻き分の長さがあり、それを包丁で切り離していた。
(2015年05月06日訪問)