津山市東部の寺町めぐり。まずは駐車場から一番遠い寺を目指した。一番遠い寺から駐車場のほうへ戻りながら寺々を訪れようという作戦だ。
その往路、住宅街に城のような建物が見えた。
行ってみるとそこは民宿だった。
きょうはもう宿泊する宿を決めてしまっていたのが惜しい。こんな民宿があるならここに泊まりたかった。
博物館も併設されているようだ。
おそらく、あの天守閣の内部が展示スペースなんだろうな。
天守閣は三層三階、下部には石垣もありかなり立派。
城郭建築の分類には歴史的に城があった場所に建つ建物として、現存天守、復元天守、模擬天守などがあるとされる。それ以外の、もともと城跡でもなんでもない場所に作られる天守閣については、D-one氏によって「あやしい城」というカテゴリが提案されている。
まあ、別に建物が怪しいわけではなく「史実に基づくかどうかあやしいよね」というような意味合いである。
この民宿がいつ建ったのかは未確認だが、このような小さな天守閣は昭和の高度成長時代に作られたものが多い。当時サムライとかニンジャがヒーローであったし、経済的に日々豊かになるイケイケの世相の中で、一国一城の主になることを誰もが夢みられる時代だった。
現在だとこうしたおおらかな建築を作る人はいないし、城跡に建てるにしても考証がどうとか、在来工法で正確に復元しなければなどと、まっとうではあるが窮屈な時代になってしまった。
寺社建築でも平成の新築寺院は歴史的なデザインをよく研究して建てられるようになったが、私としては昭和のような勢いや個性が感じられず、心を揺さぶられる建築がなくなってしまったと思っている。
あやしい城を見て常に心を揺さぶられるのは、昭和時代の夢や願望がストレートに形になったものだからだろう。そして、おそらくもうそういう時代は二度と来ないのではないだろうか。
現在は民宿は廃業、博物館も見られないようだ。
(2003年04月29日訪問)