両山寺へ向かう途中、棚田があった。
秋政の棚田というらしい。200枚の田んぼがあり、面積は16ヘクタールあるとのこと。平均すると1枚が8アール。8アールは一般的な田んぼとしては狭いが、山間地の棚田としてはまずまずの広さだと思う。
ただ、山間地の棚田の難点として、圃場の形がいびつなことが挙げられる。田植え機を使って植えようと思うと、一筆書きで田んぼの内部を回れない場合が多く、どうしても手植えに頼らざるをえないはずだ。
そうした田んぼが維持されているというのはすごいことだと思う。棚田が珍しい地域であればグリーンツーリズムやオーナー制度などで資金を調達できるが、岡山県中部にはいたるところに大規模な棚田があり、都市生活者からの支援が行き渡るわけではないだろう。
山の斜面に広がる集落。銀色の寄棟屋根の農家が景観のキーになっていると思う。茅葺き屋根にトタンをかぶせたものだ。
もしトタンをかぶせていない茅葺き屋根だけで構成される集落があるとしたら、よほどの金持ちばかりが住む村か、あるいは、霞を喰って生きていける仙人のような人が住む村のいずれかであろう。そうでなければ、農村の皮をかぶった土産物屋街である。
しがたがって、現代において普通の生活者が暮らす農村で美しい光景を求めるなら、トタンで覆った茅葺き屋根の点在する村というのが理想なのではないだろうか。
(2003年04月30日訪問)