神魂神社

国宝の本殿は大社造りの見本的な存在。

(島根県松江市大庭町)

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神魂(かもす)神社。

八重垣神社の近隣なので、まとめて参詣することが多いと思う。八重垣神社がとてもミーハーな感じなのに対して、こちら神魂神社はとてもストイックな感じの神社だ。

一の鳥居は白木の明神鳥居。

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鳥居の横には詳細不明の納屋か末社と思われるものがあった。

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杉林の中の長い参道を進み、石段を登ると切妻平入りの拝殿が見えてくる。

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本殿は大社造りの建築で国宝。屋根は杮葺き。原形は室町初期に建てられ、安土桃山時代に再建されたままの形をとどめており、現存する国内最古の大社造りの建物だ。

「大社造り」というと、出雲大社の建物の造りと考えがちだが、この本殿は現在の出雲大社よりも古く、「大社造り」の原初の構造に近いとも言われている。

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視界の邪魔になる高い瑞垣などがなく、すぐ近くまで寄って観察できるので、大社造りをよく理解するためには最適のリファレンスモデルと言っていいだろう。

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左側からみると、正面が2間で階段と向拝が右側にオフセットしていることがよくわかる。

正面の中央に見える太い柱は「宇豆柱(うずばしら)」といい、これが他の四隅の柱よりも太く前にずれ出したような間取りになっているのが神魂神社の本殿の特徴である。

出雲大社の地底から発掘された旧社殿の間取りでは、宇豆柱は(伊勢神宮の棟持ち柱のように、)建物の外壁より外側に独立して建てられていたことが判っている。

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一方で現出雲大社の間取りは、四隅の柱と宇豆柱は太さも並びも均一である。

このことから神魂神社の宇都柱の意匠は、出雲大社よりもより大社造りの原初の形に近いとされるのだろう。

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また大社造りのもうひとつの特徴である高床も、建物の規模に対して高さの比率が、神魂神社のほうが出雲大社よりも高く、これも原初の出雲大社の姿により近いと考えられる。

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本殿の右手前側には社務所がある。

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本殿の右奥には末社群。左から、杵築社、伊勢社、熊野社、釜社。

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本殿の左奥にも末社群。左から、外山社、貴布禰(きふね)/稲荷社(二間社)。

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二間社流造りの左側が貴布禰社、右側が稲荷社で、この建物も国重文に指定されている。

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稲荷社の眷族の狐はかなりいい味を出していると思う。

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こちらは左側。

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外山社。

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外山社からさらに左のほうへ入っていくと荒神社がある。

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その前には注連縄のようなものが掲げられているが、これを「龍蛇(りゅうじゃ)さん」というそうだ。

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荒神さんの本体。

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荒神社からさらに奥に行くと、武勇社(奥)、恵比寿社(手前)がある。これらは新しい建築で、築20~30年といったところか。

神魂神社の本殿はすばらしいもので、しかも近くから観察できるのがうれしい。出雲地方の神社を巡る場合はぜひ立寄りたい神社だ。

(2005年05月01日訪問)