竹生の猪垣

道路の法面の上に積まれた石垣。

(香川県小豆島町西村)

体育の日の3連休、私は小豆島(しょうどしま)へ来ていた。小豆島は瀬戸内海の島で、岡山県と香川県のあいだにあるが行政上は香川県に属している。瀬戸内の大きな島のいくつかは橋で渡れるが、小豆島は船でしか訪れることができない。

朝、徳島を発ち、高松からフェリーで小豆島の草壁港まで約1時間の船旅だった。関東に住んでいたころは車をフェリーに載せるということが人生の一大事のように思っていた。しかし四国に移り住んでからは電車に乗る程度の気軽さになった。

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瀬戸内の穏やかな海がキラキラと光っている。

最初に訪れたのは草壁港から近い「オリーブ公園」。小豆島の名物はいろいろあるのだが、どうしてもひとつだけ挙げるとしたらオリーブかと思う。百年前から始まったオリーブ栽培は、最近とみに盛んになり特産品になっている。

でもここへ来たのは、オリーブを見るためではなく猪垣(ししがき)を探すためなのだった。

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「猪垣」とは畑を荒らすイノシシを山に封じ込めるために作られる壁である。

これから探す竹生(たこ)の猪垣は、集落の北側の山と里の境界(点線)あたりにあるだろうと目星をつけてこのオリーブ公園の外周の農道へ上がってきたのである。

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さっそくそれらしき石積みを発見。

小豆島の土壌は花崗岩が風化した真砂土が堆積している。道路を造るためにその土壌を削って出来た土坡の法面の縁に石が並んでいた。たぶんこれが猪垣の遺構だろう。

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樹木に隠れて見えにくいが石垣はずっと続いている。

猪垣はイノシシが回り込んだら意味がないので、長い距離造られるのが普通なのだ。

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ある、ある、ある、、。

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現代では山村でイノシシが田畑を荒らしても「東京の孫に送ろうと大切に育てたお米を食べられてしもた、今年は自分が食べる米をスーパーで買うはめになったわぃ、本当にイノシシには腹が立つ」という程度の話で済むが、かつては田畑を荒らす害獣との戦いは生死に関わる問題だったはず。

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このような大規模な土木工事をしてでもイノシシの害を防がなければならなかったのだ。

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猪垣の高さは90cmくらいか。

イノシシは脚が短いので低い段差でも乗り越えられないという話を聞いたことがある。

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実際には石垣の上にさらに竹垣を組んだりしたのではないか。

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石垣に使われている石は小豆島の骨格をなす花崗岩。材料となる石は島内でふんだんに手に入る。

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石垣は山の中にずっと続いていた。クモの巣がすごくてちょっと辿る気にはなれない。

だが、かなりの規模の遺構が確認できた。全国の猪垣の遺構のなかでもレベルの高いものではないかと思う。

(2006年10月07日訪問)

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