小豆島訪問の最後のスポット、長崎の猪垣へ来ていた。
三都半島の東斜面、長崎という小さな漁村の山の上にある猪垣だ。
時刻はもう18時近く・・・。草壁港から出る高松行きフェリーの最終便は19時出航だから、あまりのんびりもしていられない。
長崎の猪垣は粘土を積んで作られたと書かれている。
土でできた猪垣というのはこれまで見たことがない。
徳島の穴吹町に土製の猪垣があると聞いて探しに行ったことがあるが、見つけられなかった。
車道から山道に入り、100mほど歩くと、尾根に壁のようなものが見えてきた。
これが猪垣に違いない。長さは200mあるという。
土でできているので、「猪垣」というよりは「猪壁」というのが適当だろう。
型枠を立てて土を流し込んで固めたものだとされている。
壁は意外にしっかりしていて、雨ざらしなのに思ったより風化していない。ホントに土を流し込んだものなのだろうか。
むしろ礫岩の地盤を削り出して作ったようにも思える。
法面はほぼ垂直で、精密に施工されている。
ここも再訪時の写真で詳細を見ていく。
前回と同じアングルで。
壁の途中に穴がある。
この穴は型枠の幅が広がらないように型枠を引っ張って固定していた跡だと考えられている。コンクリートの型枠の施工でセパレータという金物を使うのと同じだが、コンクリの施工では埋めるのが普通。
もしかしたらこの穴は猪垣に竹垣などを取付けて高くするためのホゾ穴として残したのではないか。
高さは最大で1.6mあるというが、全体で見たら低いところもあり、土壁だけでイノシシを止めることができるとは思えないからだ。シカだった2mくらいはジャンプできる。
竹垣などを追加してさらに高くしたということは充分考えられるし、そうした竹垣を取付けるホゾ穴の残った猪垣も存在している。
壁は尾根に沿って続いている。
半島を横断するような角度で作られているので、往時には半島を分断する壁だったのではないだろうか。
壁に地層のような縞模様が見えるのは、何回かにわけて土を流し入れたからだと言われている。
このあたりが壁の高さが最も高い場所と思われる。
遠くに草壁港を望む。
湾の右側の山並みは田ノ浦半島。今回の旅では立ち寄らなかったエリアだ。
ここはとても見晴らしの利く場所だった。
平坦な場所もあるので、物見台のように使われたこともあっただろう。
ふもとには長崎の集落が見える。
さて、時刻は18時を完全にまわった。
フェリーの出航時刻まで1時間を切っている。これに乗り遅れたらあとは土庄港からの便があるが、往復の割引切符を買ってきたので、片道の切符が無駄になってしまう。
急いで草壁港を目指さなければ。
今回の旅で初めて小豆島を訪れ、とても観光ポテンシャルが高い場所だと感じた。
私は洞窟寺院を確認することに重点を置いて島を回ったが、一般の観光客が楽しめるような施設も多い。
島四国八十八ヶ寺々もまだほとんど見ていないので、いずれまたこの島を訪れたいと思う。
(2006年10月09日訪問)