豊島東端の
その岡の村の中に湧水があるというので寄ってみることにした。
「唐櫃の清水」といって、弘法大師が掘り当てたという伝説をもつ湧水である。
湧水の場所は神社とお寺になっている。
神社は荒神社。お寺は清水観音堂で、豊島三十三観音の第27番札所になっている。
湧水は荒神社と清水観音堂のあいだにあり、回りは石積みで整備され、水舟も石製。
背後に鳥居と社殿が見えるため、ビジュアル的にはかなりレベルが高い。
まず社殿のほうから見ていこう。
こちらが荒神社。本殿収納型の拝殿。
清水観音堂は本堂+籠り堂の小さな無住のお寺だ。
参道の左側の石積みは家浦の築地塀でもよく見られた、板状節理の火成岩。
本堂の近影。
登録有形文化財に指定されている。湧水ではなく、観音堂の建築が指定されているのだ。
こういうありふれたお堂を申請するのはめずらしい。
湧水のほうを見ていこう。
湧水ポイントは神社側と観音堂側の2つで、神社側が有水量が多い。
観音堂側の湧水は少ないといっても、しっかりしていて、小さな字が必要とする飲み水くらいは充分にまかなえそう。
神社側の湧水は滝のように流れている。
これだと田んぼに水が張れるだろう。
湧き出た水はいったん3分割された小さな水舟に流れ込む。ここは中央が水を汲む場所で、一段下がった2つは野菜などを洗う場所だ。
そしてなにより気になるのが、右側の大きな水槽。
この大きな水槽は水がオーバーフローしていなくて、澱んでいる。おそらく水源から掛樋をして水を補給するのだろう。用途はずばり、洗濯である。
大水槽の廻りを見ると、360°にタタキがあり、全周から利用する設計になっている。
これは近所の主婦が洗濯をする「洗濯場」なのだ。それもごく最近まで使われていたか、あるいは現在でも使われている可能性がある。
こうした明確な洗濯場を紹介するのは初めてだが、中国地方でほかにもいくつか見たことがあるのでいずれ紹介できるだろう。
唐櫃の棚田。
すべて唐櫃の清水が水源になって潤されているという。
(2008年10月11日訪問)