きょうは猿ヶ京温泉のストリップ劇場まで行って、その近くには猿ヶ京温泉の日帰り入浴施設もあったのだが、そこを利用せず、あえて湯宿温泉の公共浴場に入っていくことにした。
温泉街へ入る南のY字路の分岐にオブジェがあり、その横に温泉街案内板と飲泉所がある。
案内板を見ると湯宿温泉街の旅館は7軒、それに対して共同浴場が4ヶ所というすごい構成。
湧いているお湯が本当に豊かな温泉地だということがわかる。
ただ、4ヶ所ある共同浴場のうち松の湯と竹の湯はやっているのかどうかはっきりしなかった。
また、飲泉所は機能していない。
この場所は温泉街ともちょっと離れていて、オブジェがあるだけの場所なので、もっと街の中に作ればよかったのに。
温泉街のほうへ行ってみよう。
温泉街の中の道路はとても狭く、車両では進入できない路地もあるので基本的には徒歩で行くのがいい。
温泉旅館「金田屋」の渡り廊下。
本館と新館を繋いでいるのかな。建て増しされた旅館って、温泉街にとって重要な要素だと思っている。
共同浴場「小滝の湯」。
うん、やってそう。
きょうはもうひとつのほうの共同浴場に入るつもりなので、ここには入らず。
このあたりは道も狭く、徒歩でしか行けない。
夕方に来たので、よけいに風情を感じる。
温泉街の中心部にある、温泉薬師如来堂。
薬師堂の前にはベンチがあり小さな広場になっている。
さて、ここ湯宿温泉は知る人ぞ知る、つげ義春の漫画『ゲンセンカン主人』のモデルとなった町だ。
『ゲンセンカン主人』はつげの作品の中でも『ねじ式』につぐ知名度を持つ名作。
物語は主人公がひなびた温泉街を訪ね、村人から旅館ゲンセンカンの主人がどのように主人に収まったのかの噂を聞くうちに、自分がその主人であるかのような幻想にとらわれていくというもの。
私も細かいことまで調べてきたわけでないので、町を歩いていたおじさんに尋ねてみた。
「ゲンセンカンのモデルってどの旅館ですか?」
「その看板の路地のところを入った大滝屋だよ」
「ここ?」
こんな薄暗い時間に住民にゲンセンカンの場所を訊くという、人としてダメな行ないが、つげ漫画の聖地巡礼にはふさわしいじゃないか。
路地の奥は通行止めになっていて、土蔵が見えた。
このあたりの雰囲気から漫画の構図の着想を得たのかな。
漫画のひとコマ。
「ゲンセンカン」はたぶん「源泉館」という意味なのだろう。
現在の大滝屋はこの路地ではなく、別の明るい入口があって、建物も改築されて、湯宿温泉の中でもきれいなほうの旅館になっていた。
つげ義春のエッセイなどを見ると、つげが取材で訪れたときには相当のボロ宿だったらしいがいまはその面影はない。
それと、町のどこにも『ゲンセンカン主人』のモデルであるというような看板はないので、漫画や映画を観たことがある人でも、知らなければ気付かないだろう。
まぁ正直、万人にお勧めできる漫画ではないので、つげ義春で町おこしするというのは無理があるのはわかる。
ほんと、つげの漫画に出てくるような路地。
共同浴場のひとつ、窪湯。
きょうはこちらに入浴して帰ろう。
案内板を見ると「宿泊以外の方は午後四時より九時までに入浴完了してください」とのこと。
脱衣所に入ってから、管理料として100円を収めるようになっている。
中はだれも入浴していなかった。源泉掛け流しのすばらしいお湯を独り占め。
きわだった匂いや味はないが、やや色がついている。入浴すると白湯ではない温泉感が十分に感じられる。
ただしお湯はかなり熱めだった。
飲泉用のカップも常備されている。
温泉街としては日帰り入浴の客が来てもあまりメリットはないので積極的にアピールはしないのかもしれないが、とてもよい温泉だ。
(2017年05月07日訪問)