二月・三月花ざかり、
うぐひす鳴いた春の日の
たのしいときもゆめのうち。
五月・六月實がなれば、
枝からふるひおとされて、
きんじょの町へ持出され、
何升何合はかり賣。
もとよりすっぱいこのからだ、
しほにつかってからくなり、
しそに染まって赤くなり、
七月・八月あついころ、
三日三ばんの土用ぼし、
思へばつらいことばかり、
それもよのため、人のため。
しわはよってもわかい氣で、
小さい君らのなかま入、
うんどう會にもついていく。
ましていくさのその時は、
なくなはならぬこのわたし。
明治43年発刊の『尋常小学読本巻五』より
(2004年02月25日訪問)