赤田大仏から秋田市に向かうには小さな峠を2つ3つ越えて、国道7号線に出なければならない。その道路は車通りもほとんどない間道である。
もう日も落ちて、わずかに西の空に明るさを残しているばかりだ。
峠道の山並みは影になる部分から徐々に暗やみに包まれていた。
その峠道で谷間の杉林の暗やみの中になにか光るものを見つけてぎょっとした。
ここは人里離れた峠道。その杉林の奥まったところで何かが点滅している!
明かりがあるはずのない場所に明かりがあるのだ。
地図で場所を確認すると、「
車を停め、夕やみの迫る杉林に分け入ってみた。何か電光のようなものが光っているのがわかった。
杉林を5分ほど登ると、千体地蔵の頂上部分に着く。なんとその頂上部の草むらのなかに電光サインボードがあり「折渡千体地蔵尊」の文字が光っているのだ。
それも、田舎のスナックにあるようなサインボードで七色に変色しながら光っている。
「な、なぜこんなことをする?」
道路に面した位置にサインボードを付けるならともかく、杉林の奥の奥に付けても道路からは小さくて読めない。
なのに、明らかに夜間にこの道を通る人のためにこのサインボードは点灯しているのだ。
とにかくコンセプトのよくわからない千体地蔵なのである。
斜面は地蔵尊が並ぶ霊場になっている。
ちなみにこの霊場、赤田大仏を開山した僧によって開かれたとのことである。
しかし千体の仏像は型で抜いたような同じ石仏で、昨日今日設置された雰囲気だ。
山の稜線のあたりには奇岩が連なっているので、おそらく開山が開いた霊場というのは山の稜線部の事だと思うが、現在は落石防護柵があり千体仏から稜線に登ることはできなかった。
また、すこし離れた位置にある駐車場には巨大な岩が転がっている。これは稜線の奇岩が最近崩れ落ちたものだが、説明によると「この岩は道路に降りたがっていたものだから、工事関係者に特別に頼んで撤去せずにこの場所に安置した。」というような解説がある。これもまた意味不明。
ともかく、写真だけ撮って人けのない霊場をあとにした。これであとは宿を探すのみ。
(1999年08月23日訪問)