平安寺。塔があるというので立ち寄った。
狭い道路を登ると、塔が見えてくる。‥‥が、どうも変だ‥‥。写真を見るとなかなかいい感じの寺に見えるのだが、それは解像度が低いからでもある。
実際に見ると、どうも塔のスケール感がおかしい。
それもそのはずで、遠目に三重塔に見えたのは実は二重塔でしかも異様に小さい。
大きさは一間(90cm)四方くらいか‥‥。
木造建築の多重塔と呼べるものとしては国内で最小のものの一つではないかと思う。(実際は、この物件よりも小さな木造の五重塔も知らないではないのだが、そこまでいくと果たして建築物と呼んでいいものなのかどうかさだかでない。)
この塔は建築というより、庭園の見立てのためのシンボルと考えることもできる。庭石を海や島に見立てるのと同じ考えだ。ただそれが、寺から見た庭園の点景ではなくて、平安寺を外から眺めたときに機能しているというのがおもしろい。
境内には他に、釘貫門、本堂、鐘楼、庫裏。
本堂も、山門の外から見上げると寄棟造の瓦屋根だけが見えるのでいい雰囲気だが、近くによるといかにも田舎の寺という感じの造りだ。屋根の下り棟には、途中に鬼瓦を2重に置くいわゆる稚児棟という意匠になっていて屋根のスケール感を高めている一方で、正面の平面は筋交いが見えていたりして安普請な雰囲気がする。ここにも、近くで見るのではなく山門の外から眺めるための工夫が見て取れると言ったら、うがった見方だろうか。
(2000年03月20日訪問)