願成寺古墳群は百基以上の円墳からなる古墳群で、全てが横穴式の石室を持つという。
道程の道沿いにあったので立ち寄った。茶畑の中にあり見通しはいいが、すぐに目に入るのはせいぜい10~20基といったところだ。そのうちいくつかは石室を見学できる。
古墳といえば、個人的にはやはり横穴式石室をもつものがいい。しかも石室が開口していれば言うことなしだ。
そもそも古墳の横穴式石室の原初のありかたは、今あるように開口していたのではなかったのだろう。土に埋め戻してあったか、石門のようなもので塞いであったかもしれない。だが今日見られる横穴式石室は羨道が露出して地下への入口の様相を呈している。つまり現代では横穴式石室の羨道は黄泉の国への入口のメタファーとして機能していて、より古墳の性質を際立たせる結果となっている。
個人的な話しになるが、私が生まれた町は大きな古墳がたくさんある古い場所で、小学校へ上がる前からよく横穴式石室の中で遊んでいた。そんな経験が今の洞窟好きの性癖を形作っているのかもしれない。いまでも、開口した横穴式石室には一種のノスタルジーを感じてしまうのである。
(2000年03月20日訪問)