笠岡市は岡山県の西の端にある市で、カブトガニの生息地として知られる。その笠岡市内に多宝塔があるというので立ち寄った。
あいかわらず強い雨が続いている。
場所は市の中心街、駅前通り商店街のデパートの裏手。周囲はマンションや住宅に囲まれている。
塔のある敷地の隣には観照院という寺があったので、てっきりこの塔は観照院の管理物件かと思ってしまった。
帰宅してから調べてみると、塔は遍照院という寺の持ち物で、寺は都市計画で郊外に移転して塔だけが残っているのだという。それにしても昨日も遍照院という名前の寺で三重塔を見たばかりなので、混乱してしまいそうだ。
なぜ多宝塔だけ残ったのかはわからない。想像をたくましくすれば、次のようなことが考えられよう。
この塔の亀腹には瓦が葺いてあって、通常の多宝塔とは造りが異なる。通常は亀腹は漆喰で塗ってあるだけだ。この部分は明治時代に補修のために瓦葺きになったと言われていて、再建時にこの亀腹の意匠を漆喰に戻すべきかどうかという結論が出せないためではないだろうか。
建築年代は桃山時代といわれていて、国重文に指定されている。しかし、塔の姿は一層、二層ともやや階高が大きめで、亀腹が瓦葺きなのと相まって、やややぼったい感じがする。
とりあえず、塔を四方から撮影しておいた。遠からずこの塔も移築されるだろう。
そのとき移築前の旧状を知るよすがにでもなれば幸いである。
(2001年05月02日訪問)