西願寺

映画「さびしんぼう」で見た通りの寺だった。

(広島県尾道市吉浦町)

寺町めぐりMAP

駅の観光案内に行って大変な失敗に気づいた。観光案内所のパンフレットには2種類あって私が持って行ったのは「新・尾道三部作」のロケ地マップだったのだ。新・尾道三部作とは「ふたり」「あした」「あの、夏の日」の3作である。で、私の探していた「さびしんぼう」は「転校生」「時をかける少女」とともに(旧)尾道三部作といわれる作品群で、パンフは別だったのだ。うえ~ん、パンフくらい一冊にまとめておいてくれ~。

「さびしんぼう」のロケ地は、映画の中で出てくる名前の通り西願寺(さいがんじ)という名前だった。パンフの地図はかなりアバウトで場所はよくわからないが、手持ちの地図で調べると市街地とは離れた郊外にあることがわかった。気を取り直して西願寺へと向かう。

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寺町めぐり29ヶ所目にして最後の訪問地、西願寺。

駅からはちょっと距離があるし、寺は高台にあるから参道は登り坂だ。もう最後と思い、電動アシストチャリの主電源をオン。チャリよ、あと一踏ん張りだ! ここで燃え尽きてかまわん! 西願寺までもってくれ!!

西願寺の参道は細い道で案内もないが、少し迷いながらも石段の下までたどり着くことが出来た。ここから先は歩きで進もう。なお、この寺には駐車場はなさそうなので、車で行く場合は注意が必要だ。

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映画で見覚えのある石段と石門が見えてきた。

映画のラストで当時16歳の富田靖子が演じる少女“さびしんぼう"が石段に座り、雨に濡れて消えていく場面が印象的だった参道。

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気色悪い作品の多い大林宣彦の映画のなかで「さびしんぼう」はいちばん何回も観た映画だ。

もちろん「さびしんぼう」もかなり気色悪い映画なのだが、そのなかで気色悪くないシーンのカット割、台詞、BGMは目を閉じれば頭のなかで再現できそうなくらい、そのくらい何回も観た映画なのだ。

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山門は石製の冠木門。

両端は蕨手のように丸まっている。

境内からは尾道の市街地が遠くに見渡せる。

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本堂(写真左側)と、庫裏(写真奥)。

映画で見慣れた境内だ。初めて来る寺で、これほど境内の様子を克明に見知っている寺もないのではないか。

境内は狭くて本堂全体をうまく写真に納めることはできなかった。

境内の様子

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本堂の左側には小さな堂が。名称は不明。

境内には他に、鐘堂、地蔵堂、鎮守社がある。

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映画で主人公“ヒロキ"の母(藤田弓子)が、ゴキブリが背中に入ったと言ってバタバタと周りを駆け回った鐘堂。

(ぬき)(=柱と柱をつなぐ横材)が上下2カ所に入っていて、鐘堂の中に入るには下の貫をまたがなければならないのが特徴だ。映画のなかでもこの貫のおかげで「周りを駆け回る」ことが可能になるのだ。ちなみに単層の鐘堂で下部にも貫があるのは比較的古い形式だと言われている。

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庫裏の様子。庫裏の庭には簡素な木戸門がある。

西願寺に来てみてわかったのは、映画で出てきた西願寺は、画面で見た通りの寺だったということ。何カ所でもロケをして、あたかも一カ所で撮ったように見せているのではなく、建物も参道もそのままの配置なのだ。

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寺の東側の参道。

ここは“ヒロキ"があこがれの少女“ユリコさん"と初めて実際に出あう場所。そのシーンは映画の一場面とはいえ、私の中ではまるで自分の体験のような鮮明なイメージを形作っていて、おそらく生涯忘れることはないだろう。その路地をパノラマ写真にしてみたので、映画を知っている方は思う存分パンしてみてほしい。

ユリコさんと出会った路地

こうして尾道の寺町巡りは終わった‥‥。

電動アシストチャリのバッテリーもなんとか駐車場までもってくれた‥‥。

時間は午後1時をまわっていた‥‥。

さぁーて、これから午後の部に突入だ。しまなみ海道を通って、生口島の耕三寺へと向かおう。

(2001年05月03日訪問)