紫波町の西部、滝名川の扇状地で神社を見ているうちに日が暮れてしまった。
すると町内の所々になんとも不思議な光景が出現した。
高灯籠に電飾がされているのだ。
ところが紫波町ではこれに赤や黄色の電飾がされてまるでクリスマスツリーのように光っているのだ。
それも、たまたまその家がそうしているというのではなく、紫波町の西部一帯ではどこも同じような電飾をしているのである。
そもそも高灯籠は、新仏、つまり一年以内に死んだ死者が、はじめてご先祖さまとなって家を訪れるとき、迷わずに着けるようにという目印のために立てると言われている。
これだけハデに電飾されていれば、死者も迷うことはあるまい。
私の勉強不足かもしれないが、日本にもこういうエレクトリカルな民俗があるというのは初めて知った。
かなり珍しいものではないかと思うのだが、Googleで検索してみてもそれらしい記述は見当たらない。
道路を歩いている老人がいたので訊いてみたところ、この電飾をこのあたりでは「四十八灯」と呼ぶそうで、新盆から3年間、家によっては5年間続けるそうだ。この山並みに沿って花巻のほうに行くともっとハデになるとのこと。
今夜は花巻の近くに泊まるつもりだったので、道々探しながら向かうことにした。
すっかり夜のとばりのおりた農村に、点々とイルミネーションがともる光景はとても幻想的だった。
今回の旅で一番印象に残った風景だ。
(2001年08月11日訪問)