もういちど夫婦岩のある千廐旧市街に戻る。「オモテの大光寺」の場所は末寺で聞いてすぐにピンときた。旧市街で街道を走っていて、ちょっと由緒ありそうな小道が目に留まっていたからだ。
それが川の右側にみえる参道だ。奥に見えている橋は旧街道。
参道を進むと石門と杉並木がありここから先は境内になる。
境内の中の道は狭いので、墓参の車がかち合わないように警備会社のガードマンが出て交通整理をしていた。岩手のお盆ではガードマンを呼ぶのは普通なのだろうか?
杉並木を過ぎると石畳があり、山門の四脚門がある。
門を過ぎると少しひらけていて、巨大な本堂、二階建ての庫裏が見えてくる。
この本堂の屋根は、反りのない急勾配の変わった屋根だ。
本堂の前にはまだ新しいまわり場があった。
幾何学的に整然と作られていて、SF映画に出てくるの宇宙船のカタパルトのような感じ。
本堂の左側には単層の鐘堂。
薬師如来立像は本堂の左側の宝形の堂にあった。
お堂は開放されていて自由に見学することができた。(お盆のためか、いつも見学できるのかははっきりしない。でもなんとなくいつも見学できるような気がする‥‥。)
これがお目当ての薬師如来立像だ。
平安時代末期の作と言われているが不詳で、県有形文化財に指定されている。
これは天台寺様式(?)とでも言えばいいのか。衣の作りや肉体の表現はきわめて素朴であり、和やかな姿をしている。
こんなすばらしい仏が拝観無料で独り占めできるなんて‥‥。
衣の下のほうには赤い彩色がされていて、丸い紋が染め抜かれている。白木の木造に直接彩色する手法も天台寺の仏と共通点する。そのことからもやはり平安時代とみたくなる。
頭髪と肉髻には螺髪を表現した痕跡はなく、ノミの跡がはっきりと残ったままの仕上げになっている。
そしてこの春巻きの皮をはりつけたような法衣!極限まで省略されたシンプルの美である。
あぁ、こういう仏に会えるなら、どんなに遠くにでも行けるなあ。
堂内にはほかにも捨てがたい仏たちがいる。
これは不動明王。
火焔は後補か?
不動明王というと一般には厳めしくて恐ろしい像であるが、この像はまるで女性のようなやさしい雰囲気である。
この像も手法的には薬師如来立像と似ているが、法衣の表現などはやや稚拙な感じがする。
その横に置かれていた、正体不明の僧形像。
いい味を出している。
(2001年08月13日訪問)