塩竈市で夕食を食べる場所を探して走り回っているうちに、いつのまにか隣町の七ヶ浜町まで来てしまっていた。その町内で路上に車がたくさん停まっている場所があった。松島四大観のひとつ「多聞山」である。どうやら松島湾の花火大会を見るために人々が集まっているようなのだ。
せっかくだから花火を見てやるかという酔狂な気持ちと、ついでに山頂の毘沙門堂をチェックしようという浅ましい気持ちが重なって、私は懐中電灯を手に山を登っていった。
山を少し登ると、巨大な工場のようなものが見えてくる。東北電力の仙台火力発電所だ。
その高い煙突は松島からもよく見える。
おそらく松島を訪れるほとんどの人がこの煙突を見て、
「日本三景の松島湾に、なんであんなものがあるんだ?」
と興ざめするのではないだろうか。
(写真は瑞巌寺付近から眺めた松島湾)
別に私は発電所が嫌いというわけではないし、むしろ好きなくらいなのだが、この仙台火力発電所に関して言えば、さすがにもう少し何とかできなかったのかと考えてしまう。
日本三景というイメージとあまりにも場違いな存在なのだ。景観の破壊者という意味では国内でも最強の建築物のひとつと言えるだろう。
ところで、肝心の花火なのだが、毘沙門堂の付近からは島影が邪魔になってほとんど見えなかった。そのうえ、やぶ蚊も多くて花火見物にはお勧めのスポットとは言えない。
結局、花火見物はあきらめ塩竈市内に戻ることにした。日が落ちると観光客相手の店は閉まってしまうので、知らない土地で食事をする場所を見つけるのは容易ではない。ようやく塩竈神社の付近で寿司屋を見つけ、この日の夕食はウニ丼となったのである。
塩竈から仙台までの道は前回の三陸行でも通った道なので気が楽だ。前回にも立ち寄った仙台郊外のスーパー銭湯に寄って汗を流し、さっぱりしてから帰路についた。
(2001年08月15日訪問)