了義寺

酒匂川流域の里山にある小名刹。裏手には滝がある。

(神奈川県大井町山田)

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大井町山田地区へ次の水車を求めて移動。途中、「了義寺」という立て札があったので入ってみた。寺へと続くかと思われた道はすぐ狭くなり、里山に迷い込む。どうやらとんでもない裏道に入ってしまったようだ。

ようやくたどり着いた寺の入口には大きな釘貫門があった。

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この日のように目的も時間の制約もなく、行く先々で目に付いた看板に釣られて見知らぬ寺を訪問するのは楽しいものだ。

特にこの了義寺のように、木立の中を長い参道が続いているような閑静な寺に出会って、初めてその参道を歩いていくときのわくわくするような気持ちは、どんなものにも代えがたい幸福ではないかと思う。

‥‥たとえ、その先にあるのが、本堂、庫裏のみの質素な寺であったとしてもだ。

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了義寺は決して質素な寺などではなく、間口9間の大きな本堂をもつ立派な寺だった。

背後は広葉樹の森に覆われ、俗界の喧騒を忘れさせるような静けさ。いかにも東海地方にありそうな里山の小名刹である。

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鐘堂はやたらに転び(柱の内傾)の大きなRC造の建築。

屋根は宝形屋根だが、私は鐘堂や鐘楼には宝形は似合わないと思う。梵鐘という重量物をつり下げるためには大きな梁が必要で、その梁の水平方向の直線は入母屋や切妻の小屋組みにこそすっきりと納まるし、見た目にも安定感を与えると思うのだ。宝形屋根にすると、屋根のてっぺんの宝珠から梵鐘にかけて垂直に線がつながってしまい、頼りない感じがすると思うのだがどうだろう。

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境内の東側にあった六地蔵。

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本堂の右奥には弁天堂があった。とても薄い石橋がかかっている。

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弁天堂の裏手には滝がある。

ちょっと雑然としていてあまり爽やかな感じの滝ではなかったが、寺の境内にあるものとしては立派な部類だ。

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滝から流れ落ちた水は遣り水となって弁天池にそそいでいた。

了義寺は観光客が来るような寺ではなかったが、酒匂川の流域ではかなり印象に残る寺であった。

(2001年06月03日訪問)