西薬師教会

常楽寺塔頭のひとつ。平安仏が拝観できる。

(愛知県半田市東郷町2丁目)

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西薬師教会。常楽寺の参道にあった教会。左写真の右奥の向拝のある堂がそう。

仏教における「教会」というのは、厳密な定義があるかどうかは知らないが、布教などのための出張所のような施設をいう。たいてい墓地はなく、境内には参詣者が仏を拝むための建物もないものが多い。

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その観点から言えば、西薬師教会は、教会というより普通の「寺」に近い。本堂と庫裏があるからだ。庫裏は無住のようだから実態としては「辻堂」というほうがより近いかもしれない。

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本堂は開いていたので勝手にあがらせてもらった。

内部は畳敷きで奥に聖観音、厨子、大日如来、十二神将像が置かれている。

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大日如来座像。風化の度合いからしても見るからに古そうだし、天衣の掘り込みやプロポーションも充分に平安期を思わせるものだ。案内板によれば藤原期の仏像で市指定文化財とのこと。

藤原期の仏像なら、保存状態の良いものは国重文、さらに造形が優れていれば国宝になる仏像もある。だがこの仏像のように表面が摩滅していたら文化財的価値は一気に下がってしまうのだ。

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別に表面が摩滅しても信仰的な価値が変わるわけではないと思うが、国重文なら耐火建築の宝物館にうやうやしく祀られて、市指定なら無住の辻堂に鍵もかけずに置かれるのである。

同じ木造構造物でも建築物は、創建当時の木材がごく一部にしか残っていなくて、歴年の改築でまったく別の外見になっていても、文化財に指定される場合がある。そして修復と称して90%の部材が後補のものと置き換わったあとでも、国重文だ国宝だと皆がありがたがって鑑賞するという現実がある。

そう考えると建築物よりも仏像のほうが、“手の加わっていない、本当に古いもの"を目の当たりにすることができるという点で面白いのかもしれない。

(2001年11月25日訪問)