おまけ。
帰り道で常滑市の正住院という寺をチェックした。良さそうなな寺なら、次にこちらの方面に来るときに訪問しようと思ったからだ。
正住院の門前は商店の明かりが道に桟の影を投げかけるだけの、さびしい港町の路地だった。
この日は月が出ていなくて、真っ暗な夜。山門は黒い不気味なシルエットになっている。
こういう寺の雰囲気もいいではないか。
写真も無理な増感をせずに、そのときの印象に近い暗さにしてみた。
夜の写真というと、長時間露光による非現実的な写実を見かけるが、そうではなくて、見えないものを見えないままに描写してみたいというのは、ずっと思っていたテーマなのである。
山門は閉まっていて、境内には入れなかったので塀越しに境内を見る。境内には宝形あるいは六角堂のような感じの屋根がわずかに見えていた。しかし、どんなに目を凝らしてみても、それが何の堂なのかは見極めることができないのだった。それほど暗い夜なのである。
もちろん人間の目のほうが感度はいいはずであるが、これは私の記憶の中の暗さに近い写真である。
昼間見たら、案外なんでもないような道にも、「見えない」ということによって、いろいろと想像が入り込む余地ができてくる。
この窓の中にはどんな部屋があるのだろう。
こうして、知多半島をひとまわりした3日間の旅は終わった。最後にチェックした正住院は、山門といい、輪蔵とおぼしきシルエットといい、再訪に値する寺だと判断できた。どうやら次の旅は、ここからの続きになりそうである。
(2001年11月25日訪問)