赤城山麓の稚蚕共同飼育所巡りをするために、群馬県に帰省した。当日は1月14日で小正月。群馬県の西半分、すなわち利根川より西側ではどんど焼きが盛んに行われる。久しぶりなので、どんど焼きを見学しようということになった。レポートのスタート早々、稚蚕共同飼育所でないうえ、赤城山麓ですらないのだが、榛名山麓の高浜という集落へ出かけた。
高浜地区では過去にも何度かどんど焼きを見にきたことがある。
高浜のどんど焼きの特徴は、道祖神小屋(写真)が大型で内部に室内が作られお篭りをすることと、小屋に点火する当日の夜明けに触れ太鼓が村内を廻ることではないかと思う。
もっともこの日は私が1時間は寝坊したため、触れ太鼓を見ることはできず、到着したときには小屋の周辺にはすでに村人が集まり始めていた。
小屋の内部。
以前に訪れたのは、高浜の別の小屋だったが、夜に訪問したときにけんちん汁を振る舞っていた。この小屋でも内部に囲炉裏があったので、おそらくお篭りをしたのではないかと思う。
小屋に火をつけるときはは内部から点火する。
点火の瞬間はとても危なくて、過去に死者がでたこともあるという。それでも村の顔役の男達にとってはこの点火は他人には譲れないものとみえて、よせばいいのに何人もが争うように小屋の中に入って火をつけていた。
小屋に火が回るのはあっという間のできごとだ。
小屋はすぐに崩れ落ちる。杉の葉が使われているのですごく煙が出るし、竹が熱で爆ぜる爆発音が朝の村に響き渡る。
炎が高いうちに、書き初めを火に投げ込む人もいる。書が燃えながら舞い上がるが、高くあがるほど書の腕が上がるといって喜ぶのである。
小屋の形がほぼなくなり、炎が小さくなると、餅花やスルメを持った村人達が火の側に寄ってくる。炎が上がっているときは熱さと火の粉で小屋の側には近寄れないのだ。
この餅花のことを群馬では「メーダマ」と呼ぶ。「繭玉」のことで、すなわちカイコの豊作を祈る予祝儀礼なのである。稚蚕共同飼育所巡りのスタートにふさわしい行事と言えるだろう。
メーダマはミズキの木の枝に指した団子である。何日か前に作って飾っておくので、どんど焼きの当日にはもう乾燥して硬くなってしまっているが、こうして火で焙ることで柔らかくなって食られる。上等な粉よりも、くず米で作ったほうが甘くて美味しいメーダマになるのだそうだ。
どんど焼きで焙ったメーダマを食べると、その年は風邪を引かないという。
小さな子供たちが寄せ太鼓を叩いて遊んでいた。
こうやって子供たちは村の行事になじんでいくのだろう。
(2007年01月14日訪問)