国道17号線を前橋市街から渋川市に向けて走ると、右側の丘の上に巨大な民家が見える。塩原蚕種といって、かつてカイコの卵を供給していた蚕種メーカー(
養蚕で使われるカイコの卵はかつては国が法律によって管理していた。輸出する生糸の品質を安定させるため、農家が勝手に卵を産ませたり、掛け合わせて新しい品種を作ることは許されず、種屋は免許制度だったのである。養蚕農家は、毎回種屋から卵を購入していた。
今回の旅のメインテーマである稚蚕共同飼育所でも種屋から届いた卵から飼育を始めるのである。
塩原蚕種は利根川の東側を仕切っていたと言われる最大規模の種屋だった。「塩原又」と呼ばれる
母屋は木造三階。越屋根の部分が窓のようにみえるので、見た目には木造四階にも見える。とほうもなく巨大な木造建築だ。いかに栄えていた種屋だったかがわかる。
当サイトではときどき「この物件は県文に値する」などと勝手に書いているが、塩原蚕種については、いまさらここで指摘するまでもないだろう。おそらく前橋市の非文化財物件の中では市指定にすべき最有力候補だろう。
2019年、「塩原家住宅」として国指定重要文化財に指定された。
(2007年01月14日訪問)