一丁田稚蚕共同飼育所。
この飼育所も外見からは稚蚕飼育所だと見抜くのはむずかしい物件だ。
小部屋式稚蚕共同飼育所を見分けるための特徴である、ブロック造、換気塔、高窓、妻側にある大きな配蚕口、のいずれも備えていないからである。
片側にある配蚕口に相当する扉も小さい。
構造は木造モルタル、小屋組みは木造、スレート瓦葺き。どうみても、普通の住宅と見間違えそうな構造だ。
現在は工務店の倉庫、兼、作業所になっているようだった。
手前側が宿直室と貯桑場、奥側が飼育室の2部屋になっている。
プレートを見ると、「昭和45年セントラルヒーティングオートフレーム」という文字がかすかに読み取れる。
「セントラルヒーティングフレーム方式」という名称は小坂子一区の飼育所でも見られたものだが、ここではさらに「オート」という文言が付け加わっている。オートフレームとは、想像だが、給桑時に蚕箔を取り出すのに人手がかからないように機械化した一方式ではないかと思う。
赤城南面の稚蚕共同飼育所としては、後期の様式といえるだろう。
側面を見ると、引田、小坂子一区と同様に、上部と下部に換気扇がある。このタイプの飼育所は、大部屋飼育だったのではないかという推理はこれまでも述べた通り。
今回は、南側に窓があり、内部の様子も見えたが、飼育室は完全に改装されて作業場となっていたため、オートフレーム方式飼育がどのようなものだったかはまったくわからなかった。一方、宿直室、貯桑場の構造はこれまで見てきた他の飼育所と同じであった。
(2007年02月12日訪問)